[2022_01_17_03]トンガ沖噴火“世界的寒冷化で食料危機”へ 大気中の粉塵で太陽光遮断、農業や畜産業に打撃 「脱炭素社会」実現も困難か(夕刊フジ2022年1月17日)
 
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トンガ沖噴火“世界的寒冷化で食料危機”へ 大気中の粉塵で太陽光遮断、農業や畜産業に打撃 「脱炭素社会」実現も困難か

 南太平洋・トンガ沖で発生した海底火山の大規模噴火は、噴煙が高さが約20キロ、半径約240キロも広がったとされる。今後、大気中に粉塵(ふんじん)が長時間とどまり、太陽光を遮断することで地球が寒冷化する可能性がある。農業や畜産業に影響が及べば食糧危機となり、「脱炭素」で注目される太陽光発電にもダメージになりかねない。
 「100年に一度」「1000年に一度」とも表現される、トンガ沖の海底火山「フンガトンガ・フンガハーパイ」の大噴火。
 災害史に詳しい立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授は「今回のように大規模な噴煙が出た例としては、1991年のフィリピン・ルソン島にあるピナトゥボ火山の噴火がある。当時は噴煙が成層圏までに達し、日光を遮断したために93年ごろまで冷夏に襲われた。今回も噴煙の継続次第では『地球全体の寒冷化』が発生し、農作物への被害が出る可能性がある」と指摘した。
 20世紀最大といわれるピナトゥボ火山の噴火は、大量の二酸化硫黄ガスを中心としたエアロゾル(空気中に微粒子が多数浮かんだ状態)が成層圏に放出され、地球規模で気温が約0・5度低下した。北半球では、例年に比べ、2度ほど低い地域も出て、農作物が不作となった。日本でも93年に記録的な冷夏を記録し、政府はタイ米などを緊急輸入した。
 影響が懸念されるのは食料だけではない。噴火の影響によって日照量が減少すれば、再生可能エネルギーの1つである太陽光発電も心配だ。今冬は全国的に厳しい寒波に見舞われ、電力需給が逼迫(ひっぱく)しているが、エネルギーの確保は大丈夫なのか。
 元通産官僚で評論家の八幡和郎氏は「太陽光発電は、緊急時に信用できないエネルギーといえる。逆に原子力発電は緊急時に強みを発揮する。今後どうなるか予想できないが、噴火は今後続く可能性があり、政府はそれに対応できる備えをしておかなければならない。いつでも原子力発電を再稼働できる体制を構築しなければならない」と指摘した。
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