[2022_01_27_05](原発は)再生可能エネルギーよりも高価である 寿命の長い放射性廃棄物の問題が未解決、持続不可能 事故による本質的な危険性に加え災害に対する脆弱性があるなど グレゴリー・ヤツコ氏始め4人の声明(2022.1.6)紹介 「原子力は気候変動に対する戦略にはなり得ない」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年1月27日)
 
参照元
(原発は)再生可能エネルギーよりも高価である 寿命の長い放射性廃棄物の問題が未解決、持続不可能 事故による本質的な危険性に加え災害に対する脆弱性があるなど グレゴリー・ヤツコ氏始め4人の声明(2022.1.6)紹介 「原子力は気候変動に対する戦略にはなり得ない」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

  
グレゴリー・ヤツコ 元米国原子力規制委員長
ヴォルフガング・レンネベルク 元ドイツ連邦環境省
            原子炉安全放射線防護放射性廃棄物局長
ベルナール・ラポンシュ 元仏エネルギー管理庁長官
ポール・ドーフマン 元英国内部放射線被曝リスク調査委員会委員長

 米、独、仏、英各国で原子力規制・放射線管理の責任者だった人々が連名で発表した声明を訳しましたので、引き続き紹介します。
 最初のグレゴリー・ヤツコ氏はオバマ政権下の2009年5月13日から2012年5月21日に米原子力規制委員会委員長でしたから、日本でもよく知られた人物です。
 福島第一原発事故の際に様々な協力を申し出て、その後米国内でも原子力規制を厳しくし、米国の原発推進に対し大きなブレーキ役となりました。
 声明文の主張そのものに、さして目新しいことはないかも知れません。
 しかし、これがどのような人物から発せられたかが重要です。
 彼らはいずれも原子力産業や原子力推進体制の中枢を知っている人々であり、実態を見てきたはずです。
 私たちが知らない原子力を強力に推し進めるような技術や資源がしまってある「秘密の小部屋」は、結局原子力産業界には存在せず、いわば「既知の情報を分析すれば到達する必然的結論」が、全てであることを証明してくれています。
 それが、声明文後半にある「1から10の要点」です。
 なお、原文には番号はありませんが、読みやすくするために私が1から10まで付番しましたので、ご了承願います。

 声明「原子力は気候変動に対する戦略にはなり得ない」                      2022年1月6日

 米国、ドイツ、フランスの原子力規制の責任者、英国の放射線防護委員会の事務局長を務めた人々が訴える。
 「原子力は、気候変動に対処するための実行可能な戦略の一部ではない。」

 −−−声明文−−−

 気温が上昇しています。気候変動への感度と極地の氷の融解速度についての知識の進化は、大規模な山火事、破壊的な暴風雨、高潮、激しい降雨や洪水とともに海面上昇が急激に進んでいることを明らかにしています。
 必要とされている低炭素エネルギーへの移行の速度とペースに対する懸念と認識の高まりとともに、原子力は地球温暖化の脅威への部分的な対策として見直されてきました。
 しかし、その核心にあるのは、原子力が気候危機の解決に役立つかどうか、原子力が経済的に存続可能かどうか、原子力事故の結果はどうなるか、廃棄物はどうするか、急速に拡大する再生可能エネルギーの発展のなかに原子力の居場所があるかどうか、という問題です。
 米国、ドイツ、フランス、英国では、原子力の最前線で活動してきた専門家として、私たちは原子力規制と放射線防護の最高水準に関わってきました。
 これに関連して、私たちは原子力が気候変動に対する戦略として、重要な役割を果たすことが可能かどうか、という最大の問題についてコメントする共同責任があると考えます。
 新しい世代の原子力はクリーンで、安全で、賢明で、安価であるという、何度も繰り返されてきた中心的なメッセージはフィクションです。
 現実は原子力はクリーンでも安全でも賢明でもありません。
 それどころか、非常に複雑な技術で、重大な被害をもたらす可能性があります。
 原子力は安価ではなく、非常に高価です。そして最も重要なのは、原子力は気候変動に対抗できる、いかなる現実的な戦略の一部にもならないということです。
 世界の発電に適切な貢献をするには、原子炉の設計にもよりますが、最大一万基以上の新しい原子炉が必要となるでしょう。
 要約すれば、気候変動に対する戦略としての原子力とは、次の通りです。

 1.世界の発電量に貢献するには絶対的にコストがかかりすぎること。

 2.再生可能エネルギーの導入に伴うエネルギー貯蔵などの送電網管理手段の費用を考慮しても、エネルギー生産と二酸化炭素排出削減の点でも、再生可能エネルギーよりも高価であること。

 3.金融市場における出資にはコストがかかり、リスクが大きすぎるため、大規模な公的補助金や債務保証に依存していること。

 4.非常に寿命の長い放射性廃棄物の問題が未解決のため、持続不可能であること。

 5.事故による放射線放出の潜在的なコスト、環境、人的影響のすべてに対して保険をかける経済的な制度がないため、これらの非常に重要なコストの大部分は一般市民が負担しており、財政的に持続不可能であること。

 6.新たな原子炉設計の推進は核兵器拡散のリスクを高めるため、軍事的に危険であること。

 7.人為的なミス、内部の欠陥、外部からの影響による避けられない連鎖的な事故による本質的な危険性に加え、気候変動による海面上昇、暴風雨、高潮、洪水、洪水などの災害に対する脆弱性があり、その結果、国際的な経済的影響が生じること。

 8.「改良型」や小型モジュール原子炉(SMR)など、新しい実証されていない概念に伴う未解決の技術上および安全上の問題が多すぎること。

 9.原子炉建設と運用に向けた効率的な産業体系を、気候変動緩和のために必要と想定される建設時間と範囲内で構築するには、あまりにも困難であり、複雑であること。

 10.原子力の開発と建設のタイムラインは現実的ではなくまた、変化をもたらすために必要とされる大量の原子炉の膨大な建設費用のために、2030年代に必要とされる気候変動緩和に適切な貢献をする可能性は低い。
 原文は以下の場所にあります。
 https://www.nuclearconsult.com/blog/former-heads-of-us-german-french-nuclear-regulation-and-secretary-to-uk-government-radiation-protection-committee-nuclear-is-just-not-part-of-any-feasible-strategy-that-could-counter-climate-chan/
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