[2023_01_16_04]再処理施設の放射性廃棄物 原子力利用の「厄介者」 処分の道筋見えず【大型サイド】(静岡新聞2023年1月16日)
 
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再処理施設の放射性廃棄物 原子力利用の「厄介者」 処分の道筋見えず【大型サイド】

 日本原子力研究開発機構東海再処理施設(茨城県)で保管されている燃料被覆管などの放射性廃棄物は、強い放射線を長期間出し、地下深くに埋設処分する必要がある「厄介者」。原子力の利用に伴いさまざまな放射性廃棄物が発生するが、処分への道筋は見えないものが多く、未解決の課題として残る。

 ▽考慮せず

 原発の使用済み核燃料に含まれるプルトニウムを取り出す「再処理」はまず、燃料を細かく切断して硝酸で溶かす。その際、燃料を覆う被覆管や燃料の末端部分の部品などの金属は溶け残り、放射性廃棄物となる。
 機構によると、施設の運転開始当初は、そうした金属を入れた容器を貯蔵庫に運び、容器に付けたワイヤを切り、天井部分から下のプールに落としていた。貯蔵庫に容器の取り出し設備はないが、どうするつもりだったのか。現在の担当者は「フランスの技術を導入して建設したが、取り出しまで考慮していなかったのだろう」と話す。
 そうした金属や放射性ガスを吸着したフィルターなどは「TRU廃棄物」と呼ばれる。燃料部品のほか硝酸などを含む廃液など雑多だ。

 ▽侮れない

 TRU廃棄物のうち、放射性物質の濃度が高いものは、地下300メートルより深くに埋める地層処分の対象。東海再処理施設に約5千立方メートルあるほか、日本原燃の再処理工場(青森県、建設中)の操業や解体で約1万立方メートルの発生が見込まれる。
 地層処分は「核のごみ」と同じ場所が検討されている。核のごみは、再処理で発生した高レベル放射性廃液をガラスと混ぜて製造した固化体。処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、処分場は核のごみ4万本とTRU廃棄物1万9千立方メートルを収容する規模で、両者は100メートル程度離して埋める。
 埋設後、新たに発生した活断層が処分場を直撃し、放射性物質が漏れると仮定した最悪ケースの場合、核のごみによる地上の被ばく線量は年間最大2ミリシーベルト、TRU廃棄物は同14ミリシーベルトとNUMOは試算している。TRU廃棄物は核のごみより放射性物質濃度は低く発熱量は少ないが、水に溶けやすい放射性物質ヨウ素129を含んでおり、地下水を通じて運ばれるためだ。
 放射性廃棄物の処分に詳しい神奈川工科大の藤村陽教授(物理化学)は「ヨウ素を含むTRUによる被ばくの影響は核のごみと比べて大きいので侮れない」と話す。

 ▽大前提

 政府は昨年、エネルギーの安定供給と脱炭素化に向けて原発の最大限活用を表明。原発の建て替えや運転期間延長を打ち出し、東京電力福島第1原発事故後の原子力政策の転換を印象付けた。だが核のごみの処分場は、2020年11月に選定の第1段階の文献調査が北海道の寿都町と神恵内村で始まって以降、続く自治体は現れていない。
 政策を議論した経済産業省の審議会では「廃棄物処理をきちんと進めることが原発を利用していく上での大前提だ」と強調する委員もいたが、原発推進の強いかけ声の一方、廃棄物対策はなかなか進まない。
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