[2024_09_26_04]青森県 中間貯蔵施設に使用済み核燃料初搬入 柏崎刈羽原発から(NHK2024年9月26日)
 
参照元
青森県 中間貯蔵施設に使用済み核燃料初搬入 柏崎刈羽原発から

 20:12
 青森県に建設された全国初の使用済み核燃料の中間貯蔵施設に、26日、新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所から初めて使用済み核燃料が運び込まれました。

 使用済み核燃料を再利用する国の政策が進まず、各地の原発で保管状況がひっ迫する中、その解消に向けた取り組みで、最長50年の保管を計画していますが、地元では、そのままとめ置かれることへの懸念もあり、将来の搬出に向けた具体的な道筋を示すことが課題となります。
 青森県むつ市にある中間貯蔵施設は、東京電力と日本原子力発電の原発から出る使用済み核燃料を一時的に保管する全国初の施設です。
 この施設で保管される最初の使用済み核燃料を積んだ専用の輸送船が、26日午前8時ごろ青森県内の港に到着しました。

 使用済み核燃料は、新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原発から運び出されたもので、「キャスク」と呼ばれる金属製の容器1基に69体が収納されています。
 使用済み核燃料を入れた「キャスク」は港で専用のトレーラーに載せられたあと、およそ1.5キロの専用道路を通って中間貯蔵施設に運ばれました。事業者の「リサイクル燃料貯蔵」によりますと、施設への搬入は午後5時までに完了したということです。
 使用済み核燃料について、国は、再処理してプルトニウムなどを取り出し、再び原発で使う核燃料サイクル政策を進める方針ですが、青森県に建設中の再処理工場の完成延期で、各地の原発から搬出できず、保管場所のひっ迫が課題になっています。

 使用済み核燃料が原発の敷地外で中間貯蔵されるのは全国で初めてで、到着した「キャスク」は建物内に運び込まれたあと、事業者による検査が1週間ほどかけて行われ、原子力規制委員会の確認を経て、正式に事業が始まります。
 事業者は保管期間を最長50年としていますが、核燃料サイクルの実現にめどが立たない中、地元では、そのまま留め置かれるのではないかといった懸念の声もあり、具体的な道筋を示せるかが課題となります。

 核燃料サイクルと中間貯蔵

 政府は、原子力発電所で出る使用済み核燃料について、プルトニウムとウランを取り出す再処理を行い、再び原発の燃料として使う「核燃料サイクル」を原子力政策の柱としています。
 各地の原発の使用済み核燃料は、青森県六ヶ所村で建設中の再処理工場に運ぶ計画ですが、当初1997年を予定していた再処理工場の完成時期はトラブルや不祥事などでこれまでに27回延期され、現在も原子力規制委員会の審査が続いています。

 再処理工場に運び出せない使用済み核燃料が各地の原発にたまり続ける中、2000年には、原発の敷地外でも核燃料の貯蔵を可能にする法改正が行われました。今回保管が始まる中間貯蔵施設は、法改正の直後に青森県むつ市が誘致し、東京電力が日本原子力発電と共同で子会社を設立して建設した、2社の専用施設です。
 ただ、使用済み核燃料の保管は全国的な課題になっていて、政府は、2015年、「国も積極的に関与して中間貯蔵施設などの建設・活用を促進する」との方針を閣議決定し、各電力会社に対して貯蔵能力を拡大する計画の策定を求めたほか、都道府県に対しては、建設に向けた調査や計画への同意、工事といった段階に応じて、交付金を支給する新たな仕組みを作りました。

 全国の使用済み核燃料 保管状況

 使用済み核燃料は、建屋の中にある燃料プールで一時的に保管されていますが、再稼働が進む原発を中心にプールの容量がひっ迫しつつあります。
 大手電力でつくる電気事業連合会によりますと、廃炉作業が始まっている原発を除く全国15か所の原発では、2024年6月末の時点で、燃料プールの容量の75%にあたる1万2990トンが保管されていて、容量の80%を超えた原発も9か所に上っています。
 具体的には、

 ▼関西電力のいずれも福井県にある大飯原発がおよそ89%、
 ▼高浜原発がおよそ84%、
 ▼美浜原発がおよそ81%、
 ▼九州電力の佐賀県にある玄海原発がおよそ88%、
 ▼鹿児島県にある川内原発がおよそ85%、
 ▼中部電力の静岡県にある浜岡原発がおよそ87%、
 ▼日本原子力発電の茨城県にある東海第二原発がおよそ84%、
 ▼福井県にある敦賀原発がおよそ69%、
 ▼四国電力の愛媛県にある伊方原発と、
 ▼東京電力の新潟県にある柏崎刈羽原発がおよそ81%、
 ▼中国電力の島根原発がおよそ68%、
 ▼東北電力の宮城県にある女川原発がおよそ56%、
 ▼青森県にある東通原発がおよそ23%、
 ▼北海道電力の泊原発がおよそ39%、
 ▼北陸電力の石川県にある志賀原発がおよそ22%となっています。

 燃料プールが満杯になってしまうと、使用済み核燃料を新しい核燃料と交換することができなくなり、原発の運転自体ができなくなることから、保管方法が課題となっています。
 電力各社は、今回保管が始まる中間貯蔵施設と同じ「キャスク」に入れて原発の敷地内に保管する乾式貯蔵施設の導入を進めています。

 ▼日本原子力発電が茨城県にある東海第二原発の敷地内ですでに導入しているほか、
 ▼東北電力が宮城県にある女川原発に、
 ▼中部電力が静岡県内にある浜岡原発に、
 ▼四国電力が愛媛県にある伊方原発に、
 ▼九州電力が佐賀県にある玄海原発にそれぞれ建設を計画しています。
 ▼関西電力は、原発が立地する福井県から使用済み核燃料を県外に搬出するよう求められていて、中国電力と共同で山口県上関町に中間貯蔵施設の建設を計画している一方、福井県にある美浜原発、高浜原発、大飯原発に乾式貯蔵施設を建設する計画を示しています。

 ただ、いずれの施設も、核燃料サイクルの中核である再処理工場が動かない限りは、長期間にわたって施設内に留め置かれるのではないかという懸念もあり、地元からは国や電力会社に対し実効性のある対策を求める声があがっています。

 搬入に抗議のデモ行進

 輸送船が到着した港の近くにある砂浜には、26日午前、使用済み核燃料の搬入に抗議しようと県内外からおよそ60人が集まりデモ行進を行いました。
 参加者たちは「使用済み核燃料搬入は絶対反対だ」とか「核のゴミを持ち込むな」などと訴えて中間貯蔵施設までのおよそ700メートルを行進しました。
 「核の中間貯蔵施設はいらない!下北の会」の栗橋伸夫事務局長は「ついに青森に搬入されてしまったのかという残念な思いだ。一番の懸念は、50年経ってから本当に別のところへ搬出されるのか計画性がないということだ。自治体と事業者で交わされる契約の内容や今後の搬出先をはっきり明示してもらうまでは抗議を続けていきたい」と話していました。

 青森県 むつ市 山本市長「安全担保して」

 使用済み核燃料の中間貯蔵施設への初めての輸送が終わったことを受けて施設が立地するむつ市の山本知也市長は、「安全性を担保した上で、情報公開をしっかりやってほしいと思う。市として今後多くの市民のみなさんの意見に耳を傾けて対応していくことが重要で、50年という期間を国や事業者に守っていただけるようしっかり取り組んでいく」と話していました。

 青森県 宮下知事「より高い安全性追求を」

 青森県の宮下知事は記者団の取材に応じ、県が独自に輸送船内への立ち入り検査や周辺の環境への検査を行い問題や影響が無いことを確認したことを明らかにした上で、「安全性が極めて高い施設だと認識しているが、これまでの経験や実績におごることなくより高いレベルで安全性を追求してほしい」と求めました。
 その上で、「搬出先については次期エネルギー基本計画で明確になっていくものと考えている。新たな内閣の中で核燃料サイクル事業がどのように位置づけられるか、確認しなくてはならない」と話し、国に対して開催を要請している関係閣僚が参加する協議会で国の方針を確認する意向を改めて示しました。

 専門家「政府の責任で搬出先確保を」

 原子力委員会の元委員長代理で長崎大学の鈴木達治郎教授は、中間貯蔵施設で使用済み核燃料の保管が始まることについて、「中間貯蔵はもともと将来の使用済み核燃料の取り扱いが不透明な場合に柔軟性を確保するためのもので、原発の稼働を担保するためには非常に重要かつ戦略的な意味を持つ事業だ。再処理事業が順調に進まない中原発の再稼働が進むとこうした施設の重要性が増してくる」と話していました。
 一方で、使用済み核燃料の具体的な搬出先が示されていないことについては、「地元と事業者は50年後に施設から搬出するという約束をしているものの、搬出先の候補となっている再処理工場がいつどの程度運転するのかが非常に不透明な状況では中間貯蔵施設を受け入れたむつ市や地元の住民には不安が残るのは当然で、政府の責任で搬出先を確保するべきだ」と述べました。
 そのうえで、「これまでの原子力政策は地元との約束が空手形になるということが続いてきたので、政府や電力会社は搬出先の確保について文書で残す形でしっかりと約束するとともに、計画が順調に進まなかった場合に備え、使用済み核燃料を再処理する必要が本当にあるのか、ないとすればどうするのか、核燃料サイクルの必要性や今後についてもう一度議論する必要がある」と話していました。

 キャスクと保管方法

 施設では、原子力発電所から出た使用済み核燃料が「キャスク」と呼ばれる専用の金属製の容器に入れて保管されます。
 柏崎刈羽原発のような「沸騰水型」と呼ばれる原発の使用済み核燃料を入れる「キャスク」は、全長5.4メートル、直径2.5メートルの円筒形で、69体収納することができます。
 「キャスク」は放射性物質が漏れないよう金属製のふたが二重構造になっているうえ、圧力や表面の温度を測定し、異常がないか常に監視していて、原子力規制委員会も、燃料プールでの貯蔵に比べ安全性が高いとしています。
 むつ市の中間貯蔵施設では、「貯蔵建屋」と呼ばれる建物の中で、「キャスク」を立てた状態で金属製の台に固定し、施設の外から入ってくる空気の流れを利用して、使用済み核燃料が持つ熱を自然に冷却する方式で保管されることになっていて、事業者のリサイクル燃料貯蔵は、「貯蔵期間中の基本的な安全機能が維持できる設計になっている」としています。

 事業開始までの手順

 中間貯蔵施設の事業開始に向け、事業者の「リサイクル燃料貯蔵」は、中間貯蔵施設に運び込まれた「キャスク」の安全性を確認するための「使用前事業者検査」を行います。
 検査では、放射性物質の閉じ込めや放射線の遮蔽、核分裂反応が連続して起きる「臨界」を防ぐ機能などが確保されていることを確認します。
 事業者によりますと、検査には1週間ほどかかる見込みだということです。
 その後、原子力規制委員会が検査が適切に行われたことなどを確認したあと、事業者に「使用前確認証」を交付し、この時点で正式に事業が始まることになります。

 これまでの経緯

 青森県むつ市での中間貯蔵施設の建設は、2000年、財政難にあったむつ市が施設の誘致に伴う国からの交付金を見込んで、東京電力に対し、市内での建設が可能かどうか調査を依頼したことがきっかけで検討が始まりました。
 3年後、東京電力は「建設に支障がない」とする結果をとりまとめ、むつ市は正式に施設の建設を東京電力に要請しました。

 その後、当時の三村申吾青森県知事が県として建設に同意したことを受け、東京電力は日本原子力発電との共同出資で「リサイクル燃料貯蔵」を設立し2010年8月に建設工事が始まりました。
 しかし、着工から半年あまりたった2011年3月、東日本大震災が発生したことで工事は中断を余儀なくされます。

 震災にともなって発生した東京電力・福島第一原発の事故のあと、発足した原子力規制委員会は、事故の教訓を踏まえたより厳しい規制基準をつくり、むつ市の中間貯蔵施設も津波への対策などを見直す必要に迫られました。
 事業者は、想定する津波の高さをそれまでの6倍を超える23メートルに引き上げるなどして、対策をとることとしましたが、規制委員会の審査は6年半余りにおよびました。

 事業開始の前提となる審査に合格したあとも、工事に伴う施設の設計の審査などが長引き、事業開始の延期は9回にのぼりました。
 そしてことし安全対策の工事が完了し、8月には、県とむつ市、むつ市に隣接する5町村が、それぞれ事業者との間でトラブルが起きた際の対応などを盛り込んだ安全協定を結んだことで、着工から14年を経て、ようやく事業が開始されることになりました。

 むつ市の中間施設では、当分の間、東京電力が再稼働を目指す柏崎刈羽原発の使用済み核燃料を受け入れることにしています。
 東京電力は地元の柏崎市から再稼働にあたって保管する使用済み核燃料を減らすよう求められていて、今年度は12トン、来年度は24トン、再来年度には60トンをそれぞれ運び込む計画です。
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