[2025_07_02_01]鹿児島 十島村 震度5弱相次ぐ より強い揺れ伴う地震のおそれも(NHK2025年7月2日)
 
参照元
鹿児島 十島村 震度5弱相次ぐ より強い揺れ伴う地震のおそれも

 20:03
 鹿児島県十島村の悪石島や小宝島付近では先月下旬から地震活動が活発になっていて、震度5弱の揺れを観測する地震も相次いでいます。
 気象庁は、過去の地震も踏まえ、これまでよりも強い揺れを伴う地震が起きるおそれもあるとして注意するよう呼びかけています。

 7月2日 十島村で2回の震度5弱

 鹿児島県十島村にある悪石島や小宝島の周辺の海域では6月21日から地震が相次ぎ、先月30日と今月2日の明け方には悪石島で震度5弱の強い揺れを観測したほか、2日の午後にも小宝島で震度5弱を観測しました。

最大震度5弱 悪石島

 このうち、夕方に震度5弱の揺れを観測した地震ではマグニチュードが5.6と、一連の地震では最も規模が大きくなりました。
 この地域では、おととしや4年前にも活発な地震活動がありましたが、震度1以上の地震回数はおととし9月は15日間で346回、4年前の12月は26日間で308回だったのに対して、今回は2日午後4時までに911回にのぼりこれまでと比べても非常に多くなっています。

震度1以上の地震回数

  気象庁「当面 震度5強程度の揺れ伴う地震に注意」

 一連の地震活動について気象庁は2日会見を開き、海老田綾貴地震津波監視課長は、非常に活発な地震活動が続いている理由について分かっていないとしたうえで「過去の地震と比べて今回は最も回数が多い。揺れの強かった地域では落石やがけ崩れなどが起こりやすくなっている可能性がある。夜は倒れてくる家具などがない安全な場所で休んでほしい」と述べました。
 また、今後の見通しについては分からないとした一方で、4年前にマグニチュード6.1の地震が発生して悪石島で震度5強の揺れを観測していることを踏まえ揺れの強かった地域では当面、震度5強程度の揺れを伴う地震に注意するよう呼びかけています。

 専門家 地震の背景に「海底に3つの活断層」

イメージ

 【背景に3つの海底活断層か】
 地震活動が多くなっている背景について周辺の海底の地形に詳しい熊本大学大学院の横瀬久芳准教授は海底の地形や地震分布などから周辺には活断層が3つあり、それぞれで活動が活発になっている可能性があると分析しています。
 瀬准教授が考える活断層の位置は悪石島と小宝島の間に2本、小宝島と宝島の間に1本です。おととしと4年前は悪石島と小宝島の間の2本の活断層の周辺で地震活動が活発になったとみていて、今回は、最も南側の活断層周辺でも地震活動が活発になっていると考えています。
 2日午後、震度5弱の揺れを観測した地震は横瀬准教授が最も南側の活断層だとしている場所の付近で起きています。横瀬准教授は、この活断層周辺でも活動が活発になったことで全体として地震活動が増えているとみています。

 【海山・海台の沈み込みに伴いひずみ蓄積か】
 悪石島や小宝島が位置するトカラ列島は、陸側のプレートに海側のプレートが沈み込む琉球海溝に沿うようにあり、横瀬准教授は、海側のプレートが沈み込む際に海底に存在する複数の「海山」や「海台」と呼ばれるより規模の大きな海底の高まりが陸側のプレートを押し込み続け、活断層にひずみがたまり、地震が起きていると分析しています。

 【今後も地震続くおそれ・規模の大きい地震にも備えを】
 4年前の地震では今回の一連の地震よりもさらに規模の大きいマグニチュード6.1の地震が発生し、悪石島で震度5強の揺れを観測しています。横瀬准教授は「今までは、2本の断層面に沿って破壊が進むという地震だったが今回は3本の断層が活動していると見られる。現状のデータからみると今後、2〜3週間程度は地震が続く可能性がある。マグニチュード6程度の地震が発生するかどうかは分からないが、規模の大きな地震には備えてもらいたい」と話しています。

 小宝島とは

 十島村の島の一つ小宝島はサンゴ礁でできた島で周囲4キロメートル余り、30分ほどで歩いて島を一周できる小さな島です。
 十島村役場のホームページによりますと、6月末時点で、36世帯66人が暮らしています。
 小宝島までは、鹿児島市から週に2便定期船が出ていて、片道およそ12時間かかります。
 同じように地震が続く悪石島からは、およそ35キロ離れています。

 警察 小宝島の数か所で落石か 被害情報はなし

 鹿児島県の十島村を管轄する鹿児島中央警察署によりますと、地震被害の情報収集をしたところ、2日夕方、小宝島の住民から「数か所で直径1メートルほどの落石があった」という情報が入ったということです。
 いずれも人や建物などへの被害はないということです。

 小宝島住民「夜中に目が覚め怖い はやくおさまって」

 小宝島に住む30代の女性が2日午後3時ごろに撮影した映像には、島にある唯一の学校「小宝島学園」の校庭に亀裂が入っている様子が写っています。
 また、子どもや教員たちが校舎の外に避難している様子も見られました。
 撮影した匠真澄さんは、「地震が多く夜中に目が覚めたりどきどきしたりして怖いなと思います。子どももいるので、家では物が落ちてこないように対策をしようと思いますが、地震がはやくおさまってほしいです」と話していました。

 十島村長が現地の状況確認

 十島村の久保源一郎村長は2日、震度5弱の揺れを観測した悪石島を訪れ、現地の状況を確認しました。
 村長は、鹿児島市内にある十島村役場に戻ったあと報道陣の取材に応じ「消防団も含めてだいぶ疲れた様子だった。住民からは、建物や道路などのインフラには被害がない状況で、いまは夜が眠れないなど、身体的なケアを優先してほしいという声があった」と説明しました。
 また、村長によりますと、2日午後3時半前に震度5弱の揺れを観測するなど地震が相次いだ小宝島には職員1人を派遣し、現地の被害などの確認を行う対応をとるということです。
 鹿児島 十島村でけさ震度5弱を観測 その後も地震続く 注意を

 小宝島学園 校庭に亀裂

 地震が相次いでいる小宝島にある唯一の学校「小宝島学園」の松野浩三校長は震度5弱の揺れがあったときのことについて「見回りに行こうと思ったときに、揺さぶられるように5秒くらい揺れました。その後に緊急地震速報が出て校舎にいた児童や生徒は全員校庭に出ました」と話していました。
 松野校長によりますとこの時に校庭に亀裂が入っているのに気付いたということです。
 校長がスマートフォンで撮影した画像には、長さ10メートルほどにわたって地面に亀裂が入っているのが写っています。
 児童、生徒や学校の職員にけがはなかったということです。

 十島村の悪石島学園 元校長は

 鹿児島県の霧島市立上小川小学校の林純一校長は、2022年度から3年間、悪石島の義務教育学校「悪石島学園」で校長を務めていました。
 先月21日から悪石島が地震の揺れに見舞われ続け、先月30日、震度5弱を観測したときには、林校長は現地の教頭にLINEを使って「大丈夫ですか?時間があるときに教えて下さい」などとメッセージを送りました。
 教頭からは、学校や子どもたちの家庭も含め特に被害はなく「御安心ください」と返信があったということです。
 林校長もおととし9月、340回を超える揺れの中での生活を経験していますが、今回はそれよりも大幅に多くなっているため、心配が尽きないといいます。
 林校長は「当時もヘルメットをかぶって登校したり授業をしたりしていて、子どもたちが大変だったのを思い出します。先生方も疲れ、地域の方も疲弊しますが、今回はそれ以上に地震が続いているので、心配しかありません」と話しました。
 また教頭からのメッセージによると、夜間に揺れに襲われると防災行政無線が鳴るなどして子どもたちが目を覚まし、日中に寝不足や体調不良を訴えるケースもあるということです。
 林校長は「子どもたちを考えるとすごく胸が痛いのですが、みんなで助け合って乗り越えてほしい。応援しかできなく申し訳ないですが、頑張ってほしいと思います。島は優しい方ばかりですし、とにかく早く収束するよう願うばかりです」と話していました。
KEY_WORD:トカラ列島近海_地震頻発_: