[2026_01_23_18]東電の原発再稼働 安全への疑念残したまま(毎日新聞2026年1月23日)
 
参照元
東電の原発再稼働 安全への疑念残したまま

 04:00
 原発事業者として適格性があるのか。政府が「原発回帰」路線を進める中、地元住民や国民の疑念は晴れていない。
 15年前に福島第1原発事故を起こした東京電力が、新潟県の柏崎刈羽原発6号機を再稼働させた。事故後初めてだ。来月下旬に営業運転を始め、首都圏に電気を送ることを計画する。東電は「安全最優先を行動と実績で示す」と強調している。
 東電の不祥事が続き、再稼働は大幅に遅れた。
 6号機は2017年に原子力規制委員会の安全審査に合格した。東電はこの際「安全性をおろそかにして経済性を優先しない」など七つの約束を、法的拘束力を持つ保安規定に明記した。
 にもかかわらず、21年には同原発で安全対策上重要なテロ対策の不備が発覚し、規制委から事実上の運転禁止命令を受けた。23年に解除されたが、昨年11月にもテロ対策に関わる秘密文書のずさんな管理体制が明らかになった。

 福島の教訓生かさねば

 再稼働前後もトラブルが相次いだ。燃料の核分裂反応を抑える制御棒の警報が正しく作動しないことが直前に分かり、予定を1日延期した。1996年の運転開始時から設定を誤っていたという。
 再稼働翌日には、警報が鳴り、制御棒を引き抜く作業を中断した。電気系統の不具合が影響したと見ている。「安全に問題はない」というが、原子炉の運転停止を発表した。原因の究明と、住民への丁寧な説明が必須だ。
 長年の稼働停止で運転員の約6割は原発を動かした経験がないことも不安材料だ。新潟県の県民意識調査では、東電が原発を動かすことを「心配だ」という声が7割近くに上った。
 一連の出来事は、東電に安全最優先の文化が根付いていないことを浮き彫りにした。経営陣から現場の技術者、協力企業の従業員まで安全意識の向上が求められる。
 東電は福島第1原発の廃炉や地元の復興を進める上で「柏崎刈羽原発の再稼働は不可欠だ」と説明してきた。
 被災者への賠償など事故処理費用は13年時点の11兆円から23・4兆円に膨らみ、東電が大部分を負担する。6号機の再稼働では年間1000億円の収益改善効果を見込んでおり、その分を廃炉費用などに回したい考えだ。
 ただ、経営資源が限られる中、福島の廃炉と柏崎刈羽の安全運転の両立は容易ではない。事故で溶け落ちた核燃料の取り出しなど廃炉作業は難航を極めている。
 東電は、福島県や新潟県の住民の不安を高めないよう、国や業界他社の協力も得て現場の体制強化に尽くすべきだ。
 国策として原発を推進する政府の姿勢も問われている。
 政府は福島事故後長らく「可能な限り原発依存度を低減する」との方針を掲げてきた。ところが、岸田文雄政権時代の22年、原発回帰に転換した。

 問われる「国策」の責任

 昨年改定したエネルギー基本計画では「原発依存度の低減」という文言を削除し、「原子力を最大限活用する」方針を明示した。
 背景には、ウクライナ戦争をきっかけに海外に依存する化石燃料の調達リスクが高まったことがある。地球温暖化防止に向けて電源の脱炭素化を進める狙いや、人工知能(AI)の普及で増大が見込まれる電力需要を賄いたい思惑もある。
 しかし、福島事故の教訓を踏まえれば、経済成長や電力確保を盾に、原発をなし崩しで使うことは許されないはずだ。
 事故のリスクを再び軽視することがないよう、業界に対する監視を徹底することが必要だ。東電は言うに及ばず、他の事業者にも目を光らせなければならない。
 静岡県の浜岡原発の再稼働に向けた審査では、中部電力が安全対策上最も重要な基準地震動のデータを不正に操作していた。規制委が審査を白紙に戻したのは当然だ。厳格な規制が求められる。

 住民を守る避難計画を自治体任せにしているのも問題だ。国主導で実効性のある対策を講じるべきだ。放射性廃棄物の最終処分場の確保も課題として残されている。
 高市早苗政権が原発回帰の姿勢を強める中、日本のエネルギー政策は大きな岐路に立っている。安全最優先が大前提であることを忘れるようでは、国民の信頼は得られない。
KEY_WORD:柏崎刈羽_制御棒_不具合_:浜岡原発-地震評価-不正手法_:FUKU1_:HAMAOKA_:KASHIWA_:ウクライナ_原発_:岸田首相_次世代-原発_検討指示_:廃炉_: