[2026_01_09_14]【1月9日付社説】浜岡原発の不正/教訓踏みにじる愚行許さぬ(福島民友2026年1月9日)
 
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【1月9日付社説】浜岡原発の不正/教訓踏みにじる愚行許さぬ

 08:00
 規範意識や企業ガバナンスなどのレベルの問題ではない。東京電力福島第1原発事故の教訓を踏みにじる行為であり、許されない。

 中部電力が再稼働を目指す浜岡原発(静岡県御前崎市)で、耐震設計の目安として想定する揺れ「基準地震動」を意図的に過小評価していた疑いが分かった。

 再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査で基準地震動を策定する際、中部電は計算条件が異なる20組の地震動の中で平均に最も近い波を「代表波」にすると説明していた。しかし、実際は都合の良いものを意図的に代表波として選んでいた可能性があるという。

 今回の問題は昨年2月、規制委への外部通報がきっかけで発覚した。中部電によると、原子力土建部の社員数人が関与し、2018年以前から行われたとみられる。時間の制約や審査への影響を理由に挙げる説明があったとされる。

 浜岡原発は南海トラフ巨大地震の想定震源域にある。基準地震動は地震対策のための重要なデータだ。しかも福島第1原発事故を受けた新たな基準での審査であり、安全の根幹に関わる。事故の影響で今も苦しんでいる多くの人、困難を極めている原発の収束、廃炉作業を思えば、このような不正はあり得ない。

 中部電は外部の専門家などによる第三者委員会を設け、調査を行うという。中部電では昨年11月、安全対策工事の契約をめぐる不正が判明し、副社長らが引責辞任したばかりだ。このように不祥事が繰り返される事態を踏まえれば、第三者を入れたとしても、厳正な調査が可能かどうか疑わしい。

 中部電は14〜15年に3、4号機の再稼働審査を申請し、規制委は23年9月、中部電が示した基準地震動について「おおむね了承」と判断していた。規制委の山中伸介委員長は「明らかに捏造(ねつぞう)。安全規制に対する暴挙だ」と批判し、審査を白紙にする考えを示した。現時点で中部電に原発を運転する資格はなく、白紙は当然だ。

 申請から了承まで時間をかけて審査したものの、不正を見抜けなかった規制委にも問題がある。審査に用いるデータなどの多くは各電力会社が提出する。しかしこれまでも点検や試験のデータの改ざんや隠蔽(いんぺい)がたびたび起きている。

 山中委員長は他の電力会社が同様の不正を行っていないかは「審査、検査の中で類似不正の兆候がない」として調査しない方針を示しているが、現状認識に甘さはないか。規制委はより厳しい姿勢で他の原発についても点検し、審査の在り方などを検証すべきだ。
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