[2026_01_07_07]〈社説〉浜岡原発の不正 崩れた再稼働審査の前提(信濃毎日2026年1月7日)
 
参照元
〈社説〉浜岡原発の不正 崩れた再稼働審査の前提

 06:00
 政府が進める原発再稼働の大前提は、安全性を担保する「科学的根拠」にあったはずである。それをないがしろにする重大事だ。
 静岡県の中部電力浜岡原発で不正が発覚した。再稼働に向けた新規制基準の審査で、耐震設計の目安とする揺れ「基準地震動」のデータを操作していた。地震時の敷地の揺れを小さく見せようとしていた疑いがある。
 浜岡原発は、南海トラフ巨大地震の想定震源域の直上にある。耐震性に不備があれば、大地震で広範囲に及ぶ放射能汚染を引き起こしかねない。長野県も、新潟県の東京電力柏崎刈羽原発と並び、甚大な影響を被るおそれがある。
 にもかかわらず、安全性確保の根幹である重要なデータを意図的にねじ曲げていた。危機感、責任感の欠如がはなはだしいと言わざるを得ない。
 これを受け原子力規制委員会は審査を停止した。早期の再稼働が遠のくのは必至である。
 安全性を軽んじる事業者に危険な原発を任せられるわけがない。記者会見した林欣吾社長は「原発運営事業者としての適格性も疑われる」と自ら述べた。原子力部門の「解体的な再構築」に臨むとも強調したが、失われた信用はあまりに大きい。
 不正には複数の社員がかかわったとされる。データを操作した意図や背景について、今後、弁護士らによる第三者委員会が調べる。組織的な関与も含め、徹底的な事実解明を求めたい。
 同時に、不正は起きるべくして起きたのではないか、との疑念が拭えない。
 中電は昨年11月、浜岡原発の安全性向上対策工事の一部で、取引先と正式な契約や代金精算の手続きをしていなかったと公表した。再稼働に向け、予定通り工程を進めないといけないとの重圧があった―とも指摘されている。
 今回の不正も同様の圧力が誘因になっていたのではないか。中電内部で問題視する声もあったという。なぜ生かされなかったか。
 発覚したのは昨年2月、原子力規制庁にもたらされた外部通報によってだったという。それがなければ規制委の審査が進み、耐震性に問題を抱えたまま再稼働に至っていたおそれがある。
 日本原子力発電の敦賀原発(福井県)でも2020年に地質データの書き換えが発覚している。ほかの電力会社の原発や過去の審査は信じられるのか。政府は再稼働に前のめりの姿勢を改め、全原発の全審査を確認すべきだ。
KEY_WORD:浜岡原発-地震評価-不正手法_:HAMAOKA_:KASHIWA_:TSURUGA_: