| [2025_11_25_05]花角新潟県知事の柏崎刈羽原発の再稼働同意を批判する 再稼働同意判断は新潟県民の民意を反映せず 信頼できない東京電力による原発の再稼働は極めて危険 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2025年11月25日) |
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04:00 1.はじめに 11月21日、花角英世新潟県知事は柏崎刈羽原発の再稼働について「事前了解」を表明した。 知事は「安全性の確認」「避難計画の徹底」「国への要求」といった留保を付しているように見えるが、内容と手続きの両面で重大な矛盾と民主的正当性が欠落していることは明白だ。 特に (1)自ら繰り返してきた「信を問う」「県民に判断を委ねる」との公言を実行していない点、 (2)県議会に「県民の意思を確認する」として委ね、議会が県民の意思を代表するという前提が誤っている点、 (3)県民投票条例を否決した県議会を「県民の代表」として扱うことの不当性、 (4)知事本人が県民投票制定運動を公然と否定してきたことによる整合性の欠如、 (5)当選時に掲げた「原発依存からの脱却」という公約を忘却している点、 (6)県が設置した三つの検証委員会と検証総括委員会の結論を尊重するとしながら、その反映過程を示していない点が、政治的誠実性と説明責任の重大な欠如を露呈している。 以下、これら論点別に詳述する。 2.「信を問う」とした知事自身の言葉を踏みにじる政治的背信 知事は再稼働問題について「自ら信を問う」と明言した。 しかし実際には、自ら公言した責任を実行することなく、判断権限を県議会へ転嫁した。 しかも、その県議会は県民投票条例制定を否決した議会である。 すなわち、県政の最重要課題において、住民の直接意思を表明する唯一の民主的制度を拒絶した議会に「県民の意思の確認」を委ねることは、論理的にも倫理的にも破綻している。 知事は、自ら担うべき政治責任を回避し、再稼働に対する批判の矛先を議会へ振り向け、県民との対話を放棄した。 これは、民主政治の指導者としてはしてはならない態度であり、「信を問う」の言葉を政治的欺瞞へと変節させた者と言わざるを得ない。 3.県民の意思と参加を排除した非民主的手法 知事は県民投票条例制定署名運動について、首長として支持すべきであった。民意形成を確実に実施するために行われた署名活動を公然と否定し「議会が判断すべき」と述べている。 県政の長期的未来を左右する判断は、県民の直接判断に委ねられるものである。 しかし今回取られた手法は、主権者を政治過程から排除し、原発推進へと大転換した国策への追随が優先された。 県民の声を封じ、討論と熟議を拒絶し、県議会の多数決に隠れて行政決定を完遂する姿勢は、議会制民主主義の精神を根本から否定している。 4.「三つの検証委員会」を無効化し13年の検証努力を破壊 知事文書は「13年間の検証を踏まえた判断」と記述しているが、その実態は検証結果を原発容認という結論に合わせて編集し、内容を骨抜きにしたものである。 検証総括委員会は委員長排除により独立性を失い、県行政による事務的編集によって形骸化した。 技術委員会報告は「福島事故検証」に限定され、柏崎刈羽原発の安全性そのものの評価は意図的に避けられた。最重要だった未解明の安全課題は解明されておらず、科学的根拠に基づく結論を導くための前提条件すら、この報告書では満たされていない。 避難計画は、豪雪や道路損壊、さらに複合災害といった新潟県固有の現実を実証的に検証せず、責任主体も期限も対策資金の根拠を欠く机上の空論にすぎない。 そのうえ、避難計画そのものも事業者である東京電力の関与が強く疑われ、実質的に県当局が作成したものではなく国のひな形に従って事業者主体で作文されたものではないかと強く疑われるのである。 にもかかわらず知事は「安全性に問題なし」「理解は広がる」と断言する。これは科学的検証に対する無知であり、県民の生命を政治の道具として扱う行為である。 5.東京電力の適格性問題を意図的に黙殺 ID不正入室事件、火災防護工事未完、虚偽報告、規制委による「赤」判定(規制委が核物質防護設備の故障放置等を確認し、東電に対して厳しい措置、具体的には核物質移動禁止と長時間の監視を課した)、安全文化崩壊、情報隠蔽。これらは東電がこの間に犯してきたルール違反であり、偶発的なミスではなく、組織文化としての欠陥である。 行政責任者であれば、まず問うべきは「この企業に運転を任せられるのか」であるはずだ。 しかし知事文書は、監視チーム設置という形式的処置に依存し、根源的問題を回避し、命と安全ではなく、経済的利益の誘導と国策追従を政策判断の中心に据えてしまった。 6.「原発依存から脱却」の公約破棄 知事は当選時、「原発依存から脱却」を掲げた。その旗を降ろすのであれば、真っ先に問うべきは県民の信任である。 公約を反故にした者が、議会の信任という衝立の背後に逃げ込むことは、政治倫理として最低の行為である。 参考:花角英世新潟県知事の見解表明 「柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉の再稼働について」 https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/471705.pdf |
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