| [2025_11_21_13]柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉の再稼働について_新潟県知事_花角英世(新潟県知事2025年11月21日) |
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04:00 ※引用者注:丸数字は[]数字に変換した。 1 判断・結論 令和6年3月21日付けの経済産業大臣からの東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉の再稼働の方針への理解要請については、以下に対する国の対応を確認した上で、新潟県は了解することとする。 [1] 原子力発電の必要性と発電所の安全性について、これまで国等が行ってきた取組が県民に十分理解されていないことから、今後も分かりやすい説明を丁寧に行い、県民に伝わるよう努めること。 [2] 原子力発電所の安全性の向上に不断に取り組み、新たな知見が得られた場合には、速やかに安全性を再確認すること。 [3] 緊急時の対応について、住民が避難時の行動を理解し円滑・確実に避難できるよう、県及び市町村とともに県民への周知・理解促進に努めること。また民間事業者と実動組織との連携を通常時から図ること。 [4] 原子力関係閣僚会議で示された「避難路の整備促進」「除排雪体制の強化」「屋内退避施設の集中整備の促進」について、迅速かつ集中的に整備すること。UPZ自治体による避難路整備要望に対し、早期に方針を決定し、整備に取り組むこと。 [5] 原子力発電所への武力攻撃等対策や使用済み核燃料の処分、原子力災害発生時の風評被害対策と十分な損害賠償など多くの県民が懸念を抱いている課題に対し、国が責任をもって取り組むこと。 [6] 東京電力の信頼性の確保に向け、内閣官房副長官をトップとする「監視強化チーム」を設置することが決定されたが、実効性のある活動となるよう取り組み、その活動状況を県民に周知すること。 [7] 原子力災害対策重点区域の一部にのみ電源立地地域対策交付金が交付されている不合理な現状を是正するため、電源三法交付金の見直しの検討を早期に進めること。 この判断・結論に対する県民の意思を確認する方法については、先の県議会9月定例会において、知事が結論について県議会に県民の意思を確認するならば、ともに県民の代表である県議会として議会の意思を示すことが決議されたこと、また多くの市町村長からも指摘があったことを踏まえ、私としては、この判断を行ったこと及びこの判断に沿って今後知事の職務を続けることについて、県議会の信任を得られるか又は不信任とされるのか判断を仰ぎたい。 県では、平成24年から令和7年2月までの約13年をかけて、福島第一原子力発電所事故の検証を行い、柏崎刈羽原子力発電所の安全性等を詳細に確認するとともに、原子力災害時の具体的対応について市町村とともに国と協議を重ねてきた。また、その間の取組状況や原子力発電に関する情報を随時県民に提供するとともに、県民が原子力発電に向き合い、理解を深め、議論していただけるよう、避難時の渋滞調査など必要な調査やシミュレーションを行い、それらを踏まえた県民の多様な意見を把握するなど、丁寧かつ慎重に取組を進めてきた。 この夏に行った県民意識調査では、柏崎刈羽原子力発電所における安全対策・防災対策が県民に十分認知されていない状況や、これらの対策に関する認知度が高くなるほど、再稼働に肯定的な意見が増える傾向が明らかとなった。また、20代、30代等の世代は、高齢層の世代と比較して再稼働に肯定的である傾向も明らかとなった。 新潟県民にとって、柏崎刈羽原子力発電所とどう向き合うかは長年の大きな課題である。現時点では、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働については県民の中で賛否は分かれているものと思われるが、県民に対し、原子力発電に関する正確な情報の提供と安全対策・防災対策の周知を継続して行うことで、再稼働に対する理解が拡がっていくものと判断したところである。 再稼働に不安を感じる県民の思いを重く受け止めつつ、知事の職務を続けることについて県議会の信任が得られたならば、立地地域、さらには県全体の経済社会の活性化とともに、県民の安全・安心の向上に最大限努力してまいりたい。 2 判断に至った理由等 (1) 原子力発電所の必要性 国は、優れた安定供給性や技術自給率を有する原子力発電を推進する方針のもと、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働は、東日本の電力供給構造の脆弱性、電気料金の東西格差、脱炭素電源による経済成長機会の確保といった観点から極めて重要としている。今後、データセンターや半導体産業などにより産業部門の電力需要が増加することが見込まれる中、再生可能エネルギーや省エネだけでエネルギー需要を支えることが見通せない現状等を鑑みると、国民生活と国内産業の競争力の維持・向上のために柏崎刈羽原子力発電所が一定の役割を果たしていく必要があるとの国の方針は、現状における判断としては理解できるものと考える。 (2) 原子力発電所の安全性 [1] 施設の安全性 原子炉等規制法に基づき原子力発電所の安全性について一元的な権限と責任を有する原子力規制委員会は、柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉において、東京電力が行う放射性物質の放出を可能な限り回避する代替循環冷却設備や、多重かつ多様な電源設備や注水・除熱設備など、事故を起こさない対策や事故が起きた際の影響を緩和する対策について、新規制基準に適合していることを確認し、平成29年12月に原子炉設置変更許可を行っている。 加えて、県の技術委員会では、原子力規制庁や東京電力から説明を聴取するとともに現地確認も行い、客観的かつ科学的に議論を重ねた結果、「安全性について現時点で特に問題となる点はない」、あるいは、「原子力規制委員会の判断を否定するものではない」と結論付けた報告書を令和7年2月にとりまとめている。 したがって、柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉の安全性については確認されたものと考える。 引き続き国及び東京電力に責任を持った対応を求めるととともに、県としても、必要に応じ技術委員会等においてその取組を確認していくこととする。 [2] 避難の安全性 緊急時における国の対応や県及び市町村の避難計画をとりまとめた「柏崎刈羽地域の緊急時対応」が、県及びPAZとUPZの市町村長の意見も踏まえ、令和7年6月に原子力防災会議で了承された。 避難計画は再稼働の是非にかかわらず必要であり、重要なことは避難計画を地域住民にしっかりと理解していただき、行動に結びつけていただくことである。避難計画への理解向上を図るため、県が実施した事故時の被ばく線量のシミュレーションでは、炉心損傷が起きる過酷事故を想定し、かつ、柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉が同時に事故を起こすという最も厳しい条件でも、被ばく線量はUPZは全域で基準以下となり、PAZの一部で基準を若干超えることが明らかとなった。このことから、避難計画で定める対応が行われれば、基準を上回る被ばくを避けることができると見込まれることが示された。こうしたことを周知しながら、避難計画の一層の実効性の向上と理解向上に引き続き取り組んでいくこととする。 [3] 避難に係る個別課題について (@) まず、車による避難を円滑に行える環境の整備が重要である。 原子力発電所を中心として放射状に6方向へUPZ外まで避難する幹線道路については、円滑な避難に欠かせない高速道路の活用や、複合災害時における既設道路の通行の信頼性を更に向上させるための法面対策や橋梁の耐震補強など、優先的に整備する必要のある箇所を国の負担のもと整備する方針が示されており、県は早期の整備に向けた取組を進めている。 また、6方向の幹線道路に繋がる道路等の整備については、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法による財政優遇措置の対象地域をUPZを含む市町村に拡大する方針が示されており、県では、今後速やかに手続きを行い、この活用に向けて来年度中に具体的な予算措置を講じていくこととする。 加えて、7月にUPZ自治体から要望のあった避難路等の整備については、引き続き国との「協議の枠組み」で精査を進め、早期の整備を求めていくこととする。 (A) 次に、柏崎刈羽原子力発電所におけるPAZ及びUPZは、その全域が特別豪雪地帯あるいは豪雪地帯であることから、国と東京電力は連携し、6方向の幹線道路において、拡幅用除雪車両の増強、消融雪設備や監視カメラ等の対策を強化することとした。県としても、今後、これらの整備を早期に進めていくこととする。 こうした対策を行ってもなお、地域によっては民間事業者による除排雪対応が困難となる場合には、政府を挙げて全国規模の実動部隊による支援を実施する方針が示されている。こうした支援が円滑に実施できるように、国の実動組織と民間事業者の通常時からの意思疎通を求めていくこととする。 (B) 次に、能登半島地震や令和4年豪雪等を踏まえ、道路の損壊や通行規制、家屋の倒壊等により、避難や屋内退避の実効性を不安視する声があることから、国は、災害時に避難所となるPAZ及びUPZの学校体育館等において、住民が屋内退避を行えるよう気密化や空調設備等の放射線防護対策を集中的に整備する方針を決定した。県では、市町村の意向も踏まえながら、着実に整備を進めていくこととする。 (C) 次に、避難の実効性を担保していくには、民間事業者との連携が不可欠である。 住民の避難に必要となるバスは、バス事業者からは、災害時の状況を踏まえつつ、県バス協会との協定に基づき貸切バスや乗合バスについて可能な限り協力すると伺っている。その上で県内での調達だけでは不足する場合は、隣接県等に協力を求めることや、国が調達することで必要な台数を確保することとしている。今後も、建設業協会なども含め避難に関連する民間事業者の協力が得られるよう連携強化に取り組んでいくこととする。 (3) 東京電力の信頼性 県民意識調査では、東京電力が柏崎刈羽原子力発電所の運転を行うことについて、多くの県民が不安を感じていることが改めて明らかとなった。東京電力は、会社のガバナンス強化のため、社外の専門家等と一体となって発電所全体の運営の方針を考え、取締役会等に直接提言を行う「柏崎刈羽原子力発電所運営会議」を設置するなど信頼確保に取り組んでいるところであるが、信頼の醸成につながるよう、引き続きしっかり県民・地域と対話をし、会社経営に反映させていく努力を求めたい。 その一方で、県民の根強い不安を解消するためには、国策として原子力発電を進める国の責任のもとで、国が前面に立って県民から信頼される運営体制の構築に取り組んでいくことが不可欠であると考える。 柏崎刈羽原子力発電所の運営の監視に万全を期すため、内閣官房副長官をトップとする関係省庁の「監視強化チーム」を設置することが決定されたことは、国として柏崎刈羽原子力発電所の運営に積極的に関わっていくことの表れとして大きな意味を持つものと考える。 国と東京電力には、県民の信頼回復に繋がるよう、柏崎刈羽原子力発電所の運営について安全最優先の取組を行動と実績で示していただくことを強く求めていくこととする。 (4) 地域のメリット これまで県は、福島第一原子力発電所事故以降、防災対策が必要となる原子力災害対策重点区域の拡大が行われたにもかかわらず、電源立地地域対策交付金等の対象地域の見直しが行われていないことは不合理であり、早期に是正するよう国に要望してきたところである。 また、公聴会等では、本県は原子力発電所が立地するリスクのみを負担し、メリットが感じられないとの意見も多く聞かれたところである。 こうした状況も踏まえ、東京電力は、県内の安全・安心の向上と地域経済の活性化に貢献するため、稼働による収益から10年程度で1,000億円規模の資金を県に拠出するとともに、東京電力自ら県内で新たに事業投資などを行い、県内産業の振興と雇用創出に取り組むことを表明した。これは、東京電力が地域と共生していく、地域とともに歩むという決意の表れと受け止めている。今後は、これを地域の安全・安心の確保や地域の活性化に最大限活かしていくことが重要と考える。 一方で、原子力災害対策重点区域の拡大を踏まえた電源三法交付金制度の見直しについては、国に対して早期に検討を進めるよう引き続き強く求めていく。 令和7年11月21日 新潟県知事 花角 英世 |
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