[2025_09_14_02]関西電力、使用済み核燃料で約束重ね…「出口」見えず 搬出期限示した中間貯蔵施設は未定(産経新聞2025年9月14日)
 
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関西電力、使用済み核燃料で約束重ね…「出口」見えず 搬出期限示した中間貯蔵施設は未定

 20:27
 関西電力は8月、福井県内の原発にたまり続ける使用済み核燃料について、遅くとも2035年末までに県外の中間貯蔵施設に搬出する方針を県側に伝えた。ただ、30年ごろに操業開始とする中間貯蔵施設の確保はめどが立っておらず「約束」だけが積み上がっている。関電が原発の長期安定稼働を実現するためには、再処理工場の完成を含め、使用済み燃料の「出口」を確保することが必須条件だ。

 原発から出る使用済み燃料を貯蔵する燃料プールは全国で容量の約8割が埋まっている。特に関電は大手電力として最多の7基の再稼働を実現し、貯蔵量が24年度末で容量の約87%。搬出先を確保しなければ数年以内に原発が稼働できなくなる恐れがある。
 最終的な搬出先として想定されているのは、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)。政府は使用済み燃料からウランやプルトニウムを取り出して(再処理)、再利用する「核燃料サイクル」の確立を目指している。しかし、核燃料サイクルの要となる同工場は度重なるトラブルなどで完成が27回も延期されている。

 そこで、再処理工場に搬入するまでに一時保管する中間貯蔵施設の役割が重要になる。プールから取り出した燃料を金属製容器に入れ、電気を使わず空気の自然対流で冷却する「乾式貯蔵」の方式で保管する。東京科学大の奈良林直特定教授(原子炉工学)は「自然災害やそれに伴う停電リスクに強いメリットがある」と指摘する。
 多くの大手電力は、原発敷地内に乾式貯蔵施設を設置する形での中間貯蔵を計画している。関電も原発敷地内で設置計画を進めているものの、福井県が使用済み核燃料の県外搬出を求めているため「中間貯蔵施設」ではなく、「県外搬出の準備施設」という特殊な位置づけとなっている。

 しかも関電は乾式貯蔵施設を設置しても「原発敷地内で使用済み燃料の貯蔵容量を増やさない」と約束。乾式貯蔵施設を「30年ごろに運用開始」、県外の中間貯蔵施設に「35年末までに搬出する」とし、期限を守れなければ「燃料をプールに戻す」と明言している。
 ただ、肝心の中間貯蔵施設は「30年ごろに操業開始」としながら確保はめどが立っていない。

 関電は山口県上関町で中国電力と中間貯蔵施設の共同開発を計画。中国電は今年8月29日、予定地の調査結果について「立地は可能であると判断した」との見解を町に伝えた。町内や周辺自治体では反対論が根強く、実現に向けた道のりは遠いことが予想される。
 昨年11月には、青森県むつ市で、国内初となる原発敷地外の中間貯蔵施設が稼働開始したが、出資する東京電力と日本原子力発電の原発から出る燃料が対象。関電は対象外となっている。
 一方、関電は中間貯蔵施設の計画とは別に、六ケ所村の再処理工場と、実証研究名目でのフランスへの搬出計画をまとめた工程表を提示。28〜30年度の3年間で、再処理工場に使用済み燃料198トンを搬出するなどの計画だ。関電は再処理工場に検査対応や工程管理の「エース級」の人材を投入し、完成に向けた支援を続けている。

 乾式貯蔵施設を巡っては原子力規制委員会の審査が始まっているが、再処理工場や中間貯蔵施設の見通しがついていない状況では、福井県の了解を得る上で丁寧な説明が必要。奈良林氏は「地元(福井県)の信頼を得るために関電は慎重に手続きを進めていく必要があるだろう」と話す。

 原発新設は年内にも調査開始、メーカーは次世代炉へ人材増

 日本の原子力政策は、使用済み核燃料の処分だけでなく、将来を見据えた原発の新増設という課題も抱える。関西電力は今年7月、美浜原発(福井県美浜町)の敷地内での新設(建て替え)に向け、地質調査などの再開を発表。年内にも調査を開始するとみられる。
 同県内にある関電の原発7基は、稼働から50年以上が経過した高浜1号機(高浜町)をはじめ、いずれも高経年化が進む。法改正で60年を超える運転が可能となったが、一般的に原発は調査開始から稼働までに20年かかるとされ、時間的猶予はない。
 政府は2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で、原子力を「最大限活用する」と明記し、電源に占める原子力の割合を2023年度の8・5%から40年度に2割程度にまで引き上げる目標を掲げた。
 こうした動きを踏まえ、次世代炉を開発する三菱重工業は25年度に原発関連事業で過去最多の200人超の採用を計画する。日立製作所も25〜27年度で過去3年と比較して1・7倍の人材獲得を進めるとしている。(桑島浩任)

 「乾式貯蔵、地域の安全にもつながる」長崎大・鈴木達治郎客員教授(原子力政策)

 当初はもっと早くに再処理工場が稼働する想定だったので、使用済み核燃料がこれほど長期間とどめ置かれるとは原発立地自治体も思っていなかっただろう。関西電力は福井県に県外搬出を約束しているので、電力会社の中では一番苦しい立場といえる。
 原発敷地内の乾式貯蔵施設を中間貯蔵施設へ搬出するための一時保管場所とする関電の方針は、約束を守るという点でいえば正しい。たとえ保管量を増やせなくとも、自然災害や事故を考えれば電力のいらない乾式貯蔵施設に移すのは地域の安全にもつながる。
 一方で敷地内での乾式貯蔵がなし崩し的に長期保管になるのではないかという地元の不安もあるだろう。丁寧に説明していくことが重要になる。

 根本的な問題は再処理工場が稼働せず、核燃料サイクルが回っていないこと。仮に県外の中間貯蔵施設のめどが立ったとしても、その後に持っていく先が動いていなければどうしようもない。
 使用済み核燃料には再処理に適さないものもある。再処理だけでなく、(そのまま最終処分する)直接処分との併用も検討していいのではないか。(聞き手 桑島浩任)
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