[2024_07_05_02]放射性廃液処理設備に関する新たな懸念 「IAEAの安全基準」では重大事態として 「大容量液体貯槽の破裂」が記載されている 上岡直見(環境経済研究所代表)(たんぽぽ2024年7月5日)
 
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放射性廃液処理設備に関する新たな懸念 「IAEAの安全基準」では重大事態として 「大容量液体貯槽の破裂」が記載されている 上岡直見(環境経済研究所代表)

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 青森県六ケ所村、茨城県東海村に存在する廃液処理設備に関して、新たな懸念が見つかったので紹介する。

◎ 放射性廃液中にはセシウム、プルトニウム等の放射性核種が濃縮されており、崩壊熱が出続けている。
 このため常に冷却する必要があるが、操作ミスや自然災害により冷却水の停止事故などがあると、崩壊熱が蓄積して廃液の温度が上昇し溶液が沸騰する。
 この時にどういう現象が起きるかの事故シーケンスを次に簡単に示す。

1.溶液が沸騰し、水分が蒸発してゆく
2.沸点の低い放射性核種が蒸発してゆく
3.水分が蒸発してしまうと溶液中の成分が固まる(蒸発乾固)
4.崩壊熱は出続けているので乾固物の温度が上昇してゆく
5.乾固物自体が高温で溶融する(いわゆる「メルトダウン」)と同じ
6.容器の金属が高温で融解して破壊する

◎ また〔3〕以降では化学爆発の可能性がある。また可能性は低いが臨界が発生する可能性もある。
 ところが規制庁は事態が〔3〕で止まるとして審査をしており、それ以降の化学爆発などの事態を考慮していない。

◎ この点について2024年4月18日の衆議院原子力問題特別委員会で、立憲民主党の山崎誠議員が規制庁に対して「蒸発乾固で止まるとした根拠は何か、それ以降のシーケンスをなぜ考慮しないのか」と追及した。委員会では明確な回答がなく、後日文書での回答を求めている。

◎ これに対して規制庁は「IAEAの安全基準を踏まえて策定した」と説明しているが、市民団体の調査により、これが虚偽であることが判明した。
 規制庁は「蒸発乾固で止まる」というシーケンスがIAEAの基準によるかのような説明をしているが、IAEAの原文には重大事態として「大容量液体貯槽の破裂」が記載されている。

◎ 一方で2021年2月17日に社民の福島みずほ議員が規制庁に対して提出した質問主意書に対しては、規制委員会は「乾固し、事故が終息するとは認識していない」と回答しており、整合性がない。
 蒸発乾固で止まるか、それ以上に進展するかによって、放出される核種の量は桁ちがいに異なる。

◎ 蒸発乾固で止まるという想定のため、原子力災害対策指針では廃液処理施設のUPZ(防護対策を必要とする範囲)が5kmとされている。
 しかし原発でさえUPZが30kmに設定されているのに、単独の原発よりはるかに多くの放射性核種を蓄積している廃液処理施設がそれで収まるはずがない。
 それがどの程度になるかは現在検討しており別の機会に報告したい。
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