[2024_06_27_04]原発「40年運転」を新制度で初認可 大飯3、4号機 使用済み核燃料保管先などリスク先送り(東京新聞2024年6月27日)
 
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原発「40年運転」を新制度で初認可 大飯3、4号機 使用済み核燃料保管先などリスク先送り

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 原子力規制委員会は26日、運転開始から30年を超えた関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県)の開始40年までの運転を認めた。設備の劣化への対応方針などをまとめた長期施設管理計画を、この日の会合で全委員5人が一致して認可した。原発の積極活用を掲げた岸田政権が60年超運転を可能にした新たな制度では、初の認可となった。(渡辺聖子)

 「原則40年、最長60年」と定める原発の運転期間は、GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法が昨年5月に成立し、規制委の審査などで停止していた期間を除き、60年超の運転を可能とした。新制度が始まる2025年6月時点で運転開始30年を超える原発が、同月以降も運転継続するには10年ごとに管理計画を策定し、認可を受けることが義務づけられた。

 ◆高浜1号機の「60年超」申請が今後の焦点に

 大飯3号機は運転開始から32年、4号機は31年を超えている。新制度の対象となり、関電は昨年12月、2基を開始40年まで運転させるため認可を申請した。現在稼働中で対象となるのは、大飯原発の2基を含め6原発11基となる。
 国内で稼働している原発で最も古いのは、今年11月に運転開始から50年となる関電高浜原発1号機(福井県)。今後、関電が60年超運転を目指すのかが焦点となる。国内外で60年を超えて運転する原発はない。

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 ◆老朽原発が対象でも審査が特に厳しくなるわけでは…

 原発の60年超運転が可能となる新制度では、運転開始後30年からは10年延長するごとに原子力規制委員会のチェックを受けるが、旧制度と比べて審査が厳しくなるわけではない。大飯原発は、使用済み核燃料の保管が苦しい状況で、周辺には複数の原発もあり、同時多発の事故の懸念がある。リスクを先送りしたまま、60年超の老朽原発が稼働する時代を迎える。(渡辺聖子、荒井六貴)

 「10年ごとに見ていくということは、厳正化につながる」。規制委の山中伸介委員長は26日の定例記者会見で、新制度での審査について、そう胸を張った。
 規制委はこれまでも、運転開始から30年を超えて運転する原発について10年ごとに原子炉や配管、コンクリート構造の劣化などを確認してきた。新制度との違いはない。

 ◆新たな審査項目、書類のみで「問題ない」と判断

 新たに加わった審査対象は、製造中止が見込まれる部品の調達方法のみ。今回認可された大飯3、4号機も、規制委はほとんどを従来の制度で確認しているとして、書類のみで「問題ない」と判断した。
 規制委で新制度を議論した際、伴信彦委員が「従来よりも規制がパワフルになるというのはミスリーディング(誤解)ではないか」と指摘していた。

 ◆規制委内でも新制度に反対意見もあったのに

 新制度では、最長60年としていた運転期間が、さらに延長される。大飯3号機は2013年9月に停止し、4年半ほどの規制委の審査を経て、18年3月に再稼働した。新制度ではこの4年半を算定から除く分、60年を超えて稼働を認める可能性がある。規制委の審査を受けている多くの原発が10年以上停止しており、運転開始から70年がたっても稼働する可能性がある。
 政府は運転期間は原則40年で、例外的に60年としていた。40年超でさえ劣化での危険性が指摘されているのに、新制度では60年超にも道を開く。規制委で新制度導入の賛否を取った昨年2月、石渡明委員が「安全側への改変とは言えない」と反対を表明。全会一致が通例の規制委で多数決となる異例の展開をたどった。

 ◆稼働続ければ5年でプールいっぱい

 原発を長く稼働させれば、それだけ多くの使用済み核燃料が発生する。保管する原発建屋内のプールの「空き」は、関電が福井県内で運転する3原発では既に危機的だ。5月末現在、最も厳しいのが高浜で、稼働を続ければ約3年で満杯になる。大飯も約5年でいっぱいになる計算だ。
 関電は原発敷地内に新たな貯蔵施設を建設する計画を示し、急場をしのごうとしている。大飯では25〜30年ごろまでに設置する計画。工期が遅れれば保管場所がなくなる恐れがあり、綱渡りになっている。
 また、大飯は高浜と10数km、美浜と30数kmしか離れていない。地震や津波などと同時多発で事故が起きれば、収束作業が難航するだけでなく、住民の避難も混乱する懸念がある。
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