[2024_06_24_06]三菱重社長、新型原発の基本設計はほぼ完了−早期の建設決定望む(bloomberg2024年6月24日)
 
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三菱重社長、新型原発の基本設計はほぼ完了−早期の建設決定望む

 08:40
 三菱重工業の泉沢清次社長は21日、革新軽水炉「SRZ−1200」の基本設計はほとんど終わっていると明かし、建設地が決まれば10年程度で運転開始ができるとの見通しを示した。
 泉沢社長はブルームバーグのインタビューで、建設場所が決まらないと設計できない部分を除き、基本設計は「ほぼ終わっている」と述べた。福島第1原発事故後に原発の建て替えや新増設が滞っていることに伴う技術伝承の問題もあることから、早期に建設地を決めて計画を前に進めて欲しいと語った。

 岸田文雄政権は2023年2月に閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で、再生可能エネルギーや原子力など脱炭素効果の高い電源を「最大限活用する」と表明。中長期のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の改定でも、原発の増設を認めることが検討されていると報じられるなど、新増設の計画が具体化すれば、原子炉メーカー各社が恩恵を受ける公算が大きい。
 三菱重は既存の加圧水型軽水炉(PWR)を改良した「SRZ−1200」の開発を進めている。同社によると120万キロワット級の設備で、福島第1原発事故の教訓を反映し安全性を向上している。5月に発表した24−26年度の事業計画では、原子力を防衛・ガスタービンと並ぶ注力分野と位置づけ、3事業で売上高を計1兆円伸ばすとした。
 株式市場の期待も高い。SMBC日興証券の谷中聡アナリストらは17日付のリポートで、三菱重を「防衛・原子力銘柄の主役」だとし、力強い株価が今後も続くとの見方を示した。年初からほぼ2倍となった株価は上場来高値の水準にある。

 泉沢社長は、年間5000億円の防衛・宇宙事業の売上高を倍増する目標について、「計画通りに進んでいる」と述べた。防衛事業では人員を3割増やす方針であるほか、生産能力の拡大に向け「工場の増設、場合によっては新設もあるかもしれない」という。
 中国や北朝鮮の軍事力拡大など、日本を取り巻く地政学リスクが高まる中、政府は23年度から5年間の防衛費を従来の1.6倍の約43兆円に増額することを掲げる。三菱重は敵の射程圏外から攻撃できるスタンド・オフ防衛能力関連など、防衛事業で複数の大型案件を受注しており、23年度の防衛・宇宙事業の受注高は前の期から3倍超の1兆8781億円に拡大した。
 防衛事業を巡っては、防衛省が基盤強化に向け企業側の利益率改善などの取り組みも打ち出している。三菱重は、期待される利益率として防衛省が従来示してきた7.7%をかなり上回る水準を目指せるようになったとしている。新たな契約分については、既に受注時採算ベースで10%に近い利益率が確保できているという。

 前期(24年3月期)は円安による利益押し上げという追い風を受けた三菱重だが、泉沢社長は為替変動に「一喜一憂をすべきではない」と述べた。ただ、「これだけ上がり下がりが大きいと、予見性という面で非常に難しくなる」とも述べ、一定の水準で安定するのが望ましいとの見方を示した。
 連邦準備制度理事会(FRB)は早期利下げに慎重との見方が広がる中、為替相場は円安傾向が続いている。心理的節目となる1ドル=160円目前で推移する中、鈴木俊一財務相が24日、為替の過度な変動は望ましくないとした上で「必要に応じて適切に対応する」と話すなど政府関係者から市場をけん制する発言が相次いでいる。
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