[2024_05_27_05]「処理水」「邦人拘束」なお溝…日中首脳会談、日本「本当の勝負は習氏との会談だ」(読売新聞2024年5月27日)
 
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「処理水」「邦人拘束」なお溝…日中首脳会談、日本「本当の勝負は習氏との会談だ」

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 【ソウル=太田晶久、川瀬大介】岸田首相と中国の 李強 首相は26日に韓国・ソウルで開いた会談で、「戦略的互恵関係」の推進などを確認したものの、東京電力福島第一原子力発電所の処理水問題など個別の懸案で隔たりは埋まらなかった。日本政府は今後、第三国での国際会議に合わせた 習近平 国家主席との首脳会談を模索し、引き続き解決の糸口を探る。

 岸田首相は会談で、「大局的な観点のもと、今後の両国政府の取り組みに指針を与えるため、意見交換を深めたい」と呼びかけた。李氏は「国際政治、経済情勢は複雑な変化が起きつつあり、中日関係にも影響をもたらしている。日本が中国と共にさらに歩み寄り、行き違いを適切に管理することを希望する」と語った。
 最大の懸案である処理水放出を受けた中国による日本産水産物の輸入禁止措置を巡っては、李氏が処理水を「核汚染水」と呼ぶなど協議は平行線をたどり、日本が求める即時撤廃では折り合えなかった。両首相は事務レベルでの協議加速を申し合わせたが、これまでに2回行われた日中両政府の専門家協議で、中国は原発周辺の土壌など調査範囲の拡大を求めており、早期解決は難しそうだ。
 岸田首相は、沖縄県・尖閣諸島周辺で相次ぐ中国船の領海侵入に「深刻な懸念」を表明し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国が無断で設置したブイの即時撤去も改めて要求した。中国当局に拘束された邦人の早期解放も働きかけたが、いずれも具体的な進展はなかった。
 中国による台湾周辺での軍事演習にも懸念を伝え、「最近の軍事情勢を含む動向を注視している。台湾海峡の平和と安定は、国際社会にとって極めて重要だ」と強調した。中国外務省によると、李氏は台湾問題について「中国の核心的利益の中の核心で、一つのレッドライン(越えてはならない一線)だ」と述べ、日台連携の動きをけん制した。
 日本政府関係者は「主張すべきことを主張すれば、李氏を通じてトップの習氏に伝わる。本当の勝負は習氏との会談だ」と話す。岸田首相は日中関係の安定化や個別の懸案解決に向け、習氏が出席を見込む11月のブラジルでの20か国・地域(G20)首脳会議などの機会を捉えた首脳会談を目指す方針だ。
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