[2024_04_26_14]2022年の震度6強・福島沖地震では新幹線の「脱線事故」が発生…関係者が警鐘する“ロシアンルーレット”の打破_島村英紀(日刊ゲンダイ2024年4月26日)
 
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2022年の震度6強・福島沖地震では新幹線の「脱線事故」が発生…関係者が警鐘する“ロシアンルーレット”の打破_島村英紀

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 おととし、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の福島県沖地震が発生し、最大震度6強の揺れを観測したことで東北新幹線が脱線事故を起こした。車体が揺れて車輪が浮いてレールを乗り越えたことで、脱線に至ったとする調査報告書を2年後の2024年3月の末に公表した。この事故では乗客6人がけがをしたほか、通常ダイヤに戻るまでに2カ月かかった。
 新幹線の事故はこれだけではない。2004年の新潟県中越地震でも、走行中だった上越新幹線が脱線して傾いたことがある。この列車は長岡駅に停車するために減速中で、フルスピードではなかった。そこにいくつもの幸運が重なった。
 この新幹線が東北・上越新幹線の初代の「ボディーマウント構造」の車両だったために台車のギヤケースという部品と脱線した車輪がレールを挟み込んでくれたことも転覆をまぬがれた理由だった。
 そのほかに豪雪地帯にしかない排雪溝にはまり込んだまま滑走したこと、現場の線路がカーブしていなかったこと、高架であったためにレールのすぐ脇がコンクリートだったことなどだ。対向列車がなく正面衝突をしなかったのも幸いだった。
 重大なのは地震のわずか3分前に、この列車が長さ約8.6キロの魚沼トンネルをフルスピードで駆け抜けていたことだ。同トンネル内では地震でレールの土台が25センチも飛び上がり、1メートル四方以上の巨大なコンクリートが壁から多数落ちたほか、各所が崩壊していた。地震が列車の通過時に起きていたら、大事故になっていたのは間違いない。
 このときの脱線でも対向する上り線への横倒しなど甚大化は避けられた。
 だが、2022年の福島-白石蔵王間の高架橋で損傷が見つかった。同区間では、架線を吊っている電柱の傾斜や圧壊も起きている。新幹線そのものに耐震補強が施されても、線路が地震に耐えられないとなると、問題は大きい。
 日本は地震多発地帯である。今の学問では、いつ、どこで地震が起きるかを知ることはできない。新潟県中越地震や東北地方太平洋沖地震も、前兆を捉えられなかった。

 ■ロシアンルーレットのよう

 関係者の間ではいつか当たるかもしれないロシアンルーレットのようだと言われている。再発防止のため新幹線の脱線・逸脱防止対策のさらなる高機能化が必要だとしている。しかし対策は相手が膨大で、遅々として進まず、他方新幹線は毎日数百本も走り続けている。
 2022年の事故では車体と台車の間には揺れを吸収する「空気ばね」があったが、地震で大きく変形して空気が抜け、脱線を助長した。
 また、今回の車両には、脱線した場合でも線路から大きく外れるのを防ぐため、車輪の外側に金属製の突起が取り付けられていたが、12の軸でこの突起もレールを乗り越え、最大で1メートル余り逸脱していた。
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