[2024_05_22_01]「新規制基準が奏功するという安全神話」検討チーム(まさのあつこ_note2024年5月22日)
 
参照元
「新規制基準が奏功するという安全神話」検討チーム

 10:36
 2024年5月20日、 第2回原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム が開催された。

 何が決まったか

 第2回で何が決まったかというと、第1回(4月22日)の「 検討チームの論点及びスケジュール 」で「例えば」という言い方で示した3ケースのうち、次回以降は、ケース2、ケース3の屋内退避について考えるための「線量計算」をしてみようということ。

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  例えば、以下の形を想定する。
 ケース1:新規制基準に基づく重大事故等対策として炉心損傷防止対策(炉心への注水及び除熱など)が奏功し、著しい炉心損傷が生じないケース
 ケース2:著しい炉心損傷が生じるが、新規制基準に基づく重大事故等対策として格納容器破損防止対策(格納容器内の冷却及び除熱)が奏功し、格納容器が破損せず、格納容器圧力に応じた放射性物質の漏えいが生じる
ケース
 ケース3:著しい炉心損傷が生じるが、新規制基準に基づく重大事故等対策として格納容器破損防止対策(フィルタベント)が奏功し、格納容器が破損せず、フィルタベントを通じた放射性物質の放出が生じるケース
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2024年4月22日原子力規制庁「 検討チームの論点及びスケジュール

 計算に使うのは、 原子力研究開発機構 が開発した被ばく線量評価コード「OSCAAR」(オスカー)だということ。

 仮想的なモデルで仮の線量を計算する

 このコードに入力するデータは、原子力事業者にもらうというので、チーム会合後に山本哲也・放射線防護技術調整官に「原子力事業者は誰か」と聞いたところ、「BWR(沸騰水型)であれば、柏崎刈羽原発の東京電力、島根原発の中国電力、女川原発の東北電力、東海第二の日本原電から、データをもらって仮想的なモデルを設定する」のだという。
 各原発のデータでシミュレーションをするなら、それをそのまま公開すればいいのに、わざわざ「仮想的なモデルを設定する理由は何か」と問えば、「ある程度、代表性のあるプラントにデータ置き換えるため」だという。

 新規制基準対策が功を奏するという安全神話

 3つのケースは過酷事故が起きたときの想定だが、問題は3ケース全てが、新規制基準への対策が功を奏するという前提に立っていることだ。

 ケース1は、新規制基準が奏功し、著しい炉心損傷が生じない。
 ケース2は、新規制基準が奏功し、著しい炉心損傷が生じるが、格納容器が破損せず、放射性物質が放出される。
 ケース3は、新規制基準が奏功し、著しい炉心損傷が生じるが、格納容器が破損せず、フィルタベントを通って放射性物質が放出される。

 つまり、今回このチームは、新規制基準が功を奏するので、メルトダウンしても、格納容器は破損しないというスタート地点になって、屋内退避について考える。

 最悪の事態である「格納容器の破損」が起きないという想定のもと、
 ケース2「放射性物質が漏えいする」
 ケース3「フィルターベントを通って放射性物質が漏えいする」

 そのときにどれぐらいの放射性物質が5〜30キロ圏内(UPZ)に到達するのかを検討するのだという。その結果を見て、屋内退避について議論する。

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6.被ばく線量をシミュレーションするケース

 今回ケース1〜3として想定する事態進展の形に対して、屋内退避の対象範囲及び実施期間について検討を進めるためには、各ケースにおける距離別の被ばく線量の概略を把握することが重要となる。

 ケース1については、重大事故等対策の有効性評価において、周辺の公衆に対して著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと(発生事故当たり敷地境界で概ね 5mSv 以下)が確認されており、改めて被ばく線量のシミュレーションは行わない。

 ケース2及びケース3について被ばく線量のシミュレーションを行い、その解析結果等を踏まえ、ケース1〜3を対象に屋内退避の対象範囲及び実施期間のあり方について、それが有効に機能するよう検討する。

 その検討に際しては、重大事故等対策が機能した状況でUPZにおける屋内退避の開始時期を全面緊急事態より遅らせたり、屋内退避の実施範囲をUPZ全域から縮小したりといった柔軟な判断が可能になるかなどの検討を想定する。
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2024年5月20日原子力規制庁
屋内退避の対象範囲及び実施期間の検討に 当たって想定すべき事態進展の形について 」P22

 つまり、「原子力災害対策指針」と関係のない議論

 国際原子力機関(IAEA)の深層防護の考え方をもとに言えば、日本では、原発で過酷事故が起き、深層防護の第4層までの放射線防護が失敗した場合の第5層が「原子力災害対策指針」(以後、指針)だとされている。
 しかし、上記で書いたように、今回、検討するのは、第4層が功を奏した場合。それはもやは「原子力災害対策指針」とはまったく関係がない話だ。
 これについてもチーム会合後のぶら下がり取材でいの一番に確認した。

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 Q:基本的なことで恐縮なんですけど、指針は第5層として位置づけられていると思います。第5層は第4層が全部駄目だった場合のケースだと思うんです。今日の議論を聞いてると、第4層が奏功する場合についてのケース2、ケース3を考えると。
 山本・放射線防護技術調整官:そうです。

 Q:そうすると第5層ではないじゃないですか。
 A:現在、指針は、第4層対策が駄目な場合。実際、格納容器が破損して大量放出がある場合の体制が、第5層として既に定めているわけですよ。そういう第5層としての体制が既にあるという前提になります。けれど、実際に事故が起きたときに、新規制基準で第4層の体制が実施されるわけですから、第5層で想定されている対応の方針とは異なっていますので、それに応じた適切な防護対策はどうすべきかという観点での議論です。
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5月20日ぶらさがり取材メモより

 これでいいのか!? これでは、「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」という名の「新規制基準が奏功するという安全神話検討チーム」ではないか?

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