[2024_02_16_02]能登半島地震(M7.6)でも規制委員会が「指針」を見直さない理由 屋内退避も避難もできない状況が実際に発生したのに… 後で発電事業者(例えば東京電力)に対して賠償請求が発生することを避ける意図 東電福島第一原発事故では賠償額が膨大になった 上岡直見(環境経済研究所代表)(たんぽぽ2024年2月16日)
 
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能登半島地震(M7.6)でも規制委員会が「指針」を見直さない理由 屋内退避も避難もできない状況が実際に発生したのに… 後で発電事業者(例えば東京電力)に対して賠償請求が発生することを避ける意図 東電福島第一原発事故では賠償額が膨大になった 上岡直見(環境経済研究所代表)

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 2024年2月14日(水)に第64回原子力規制委員会が開催され「原子力災害時の屋内退避に関する論点」との資料が示された。
 すでに指摘されているように、能登半島地震では屋内退避も避難もできない状況が実際に発生したのに、示された資料は既存の資料の記載を寄せ集めただけで内容的に何の見直しもされておらず「屋内退避」を繰り返すだけである。
 各項目を見てゆくとおかしな箇所が無数にあるが、まず全体の背景を考えてみたい。

◎ まず誰でも気づく理由として、「屋内退避も避難もできない状況」を前提にすれば自治体でも原子力防災計画(緊急時対応)の立てようがなく自治体は再稼働に同意できなくなるから、あえてその論点を持ち出さず知らん顔を決め込む意図である。
 しかし別の理由も考えられる。
 それは住民を避難させると、後で発電事業者に対して賠償請求が発生することを避ける意図である。

◎ 2011年3月11日の東電福島第一原発事故では、事故の規模が「原子力損害の賠償に関する法律」の想定外になって賠償額が膨大になった。
 福島第一原発事故での避難者からの賠償請求に対して、東電はできるだけ「値切る」交渉を続け、また指定区域外からの避難者に対しては賠償を拒否するばかりか「避難の必要がないのに勝手に避難した」として被害者に対する攻撃さえ行ってきた。
 こうした経緯から、2015年前後から「できるだけ住民を動かさない」方針が示されるようになった。

◎ もし今後、大規模な事故があった場合に、屋内退避も避難もできずに被ばくして健康被害が発生すれば補償問題が発生する可能性がある。
 それに対しては過去の多くの訴訟で争点になっているように「因果関係は証明されていない」として拒否するであろう。
 この懸念を裏づけるのが同資料に「原子力災害事前対策の策定において参照すべき線量のめやすについて」という参考資料が添付されていることである。

◎ この資料は、要するに「100ミリシーベルト(実効線量)以下では健康被害は発生しない」と主張する資料である。
 これはIAEAの基準をコピペしただけで法的に有効化されていないし、その基準自体も緩すぎるという批判が多い。
 いずれにしてもあらかじめ高い基準を示しておいて、かりに補償問題が発生しても「この被ばくで健康被害が発生するはずがない」として対象者を極限しようとする準備であると推定される。
KEY_WORD:能登2024-原子力災害対策指針-見直しへ_:FUKU1_:NOTOHANTO-2024_: