[2023_12_29_01]【霞む最終処分】(8)第1部中間貯蔵の現場 減容化が生む新たな壁 処理後、高線量廃棄物に(福島民報2023年12月29日)
 
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【霞む最終処分】(8)第1部中間貯蔵の現場 減容化が生む新たな壁 処理後、高線量廃棄物に

 09:17
 東京電力福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)の敷地内に幅35メートル、奥行き70メートル、高さ10メートルの体育館のような実証試験用の施設がそびえる。
 放射線管理区域に指定されている建物内で、草木などの焼却処理で発生する灰から放射性セシウムを分離する技術開発が進む。環境省や中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)、民間企業の関係者らが集い、各種装置で試験を繰り返す。
 JESCO中間貯蔵管理センターの担当者は「県外最終処分の量を減らすための試験だ。処分時の安全性を確保できるようにする」と意義を語る。

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 除染で発生した廃棄物の最終処分に向け、草木などの可燃物は焼却して量を減らす。さらに、発生した灰を高温処理することで、廃棄物の容積を20〜30分の1程度にできるという。
 処理の際、排ガスに含まれる細かい灰(飛灰)には廃棄物に含まれていたセシウムの大部分が移行しており、水に溶けやすくなる。実証試験はこの性質を利用し、飛灰を水で洗ってセシウムを分離し、吸着剤で回収・濃縮する。その上で固化し、安定して保管できる状態にする。JESCOによると、今年度中の技術の確立を目指すという。
 ただ、施設を訪れた環境省職員は悩ましげにつぶやく。「技術を用いれば飛灰の最終処分量を大幅に減らすことができる。一方、吸着剤のセシウム濃度は高まることになる」

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 実証試験ではセシウム濃度が1キロ当たり4千万ベクレルほどになる。表面の放射線量は毎時2ミリシーベルト程度になるという。接するほどの距離に1時間いた場合、計算上は国内での年間平均被ばく線量と同程度をあびることになる。
 高線量の放射性廃棄物を生み出すことに、環境省の会議に臨んだ専門家からは「中間貯蔵施設から持ち出しにくくなる」と疑問の声が上がる。県外に最終処分場を整備した後も、受け入れに理解が得られない「厄介者」になる可能性もある。
 環境省福島地方環境事務所中間貯蔵総括課長の服部弘は「現在は技術を実証する段階。導入の可否は今後検討する」と語る。試験の成果が生かされるかどうかは現時点で見通せない。(敬称略)
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