[2023_12_23_02]「下請け任せ」は企業文化なのか…作業のリスクを軽視し続ける東京電力が福島第1原発の廃炉に立ち向かう(東京新聞2023年12月23日)
 
参照元
「下請け任せ」は企業文化なのか…作業のリスクを軽視し続ける東京電力が福島第1原発の廃炉に立ち向かう

 06:00
<連載 「約束」の今 東京電力と原発>

 「言い訳がましい説明で納得できない。ことの重大さを理解しているのか」
 18日、東京電力福島第1原発の事故収束作業について議論する原子力規制委員会の検討会で、この会議の責任者を務める伴信彦委員は怒った。
 汚染水処理設備「多核種除去設備(ALPS)」で10月25日に起きた作業員の被ばく事故が議題だった。配管の洗浄中に仮設ホースが外れ、かっぱを着ていなかった作業員2人が廃液を浴び、一時入院。廃液のベータ線の放射能濃度は、原子炉建屋にたまる高濃度汚染水より100〜1万倍も高かった。
 東電は、下請けの東芝が契約内容を守らず、多数の違反行為があったと説明。東電社員は現場に行かずに実態を把握していなかったにもかかわらず、「(事前の)作業計画は不十分ではなかった」と主張し、東芝の責任を強調した。
 伴委員の指摘を受け、東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者は「東芝だけが悪いとは考えていない」と釈明に追われた。

 「計画的にリスクの低減を図り、正確な情報発信を通じて理解を得ながら、福島第1原発の廃炉と復興を実現する」(柏崎刈羽原発の保安規定より)

 ◆遠隔で行っていた「はず」の汚染配管撤去作業

 高い放射線量下での作業のリスクを軽視する東電の姿勢は、これまでも繰り返されてきた。
 7月に完了した1、2号機間にある高濃度に汚染された配管の撤去作業は当初、すべて遠隔操作で行う計画だった。現場の放射線量が高く、人が容易に近づけないからだ。
 事前の模擬訓練での想定が甘かったため、撤去は難航した。昨年4月、切りかけの状態で切断できなくなった配管が脱落しないよう、ワイヤロープで固定する必要に迫られた。東電はその日、「遠隔操作で固定し、作業員は近づいていない」と本紙に説明した。
 しかし、翌日に訂正の連絡が入った。実際には下請け企業の作業員9人が現場でロープを固定し、被ばくしていた。広報担当者は「現場への確認が不十分だった」と釈明。計画外の複雑な固定作業は、遠隔操作では不可能だった。東電の認識の甘さが作業員の無用な被ばくを招き、現場の実態も分かっていなかった。
 トラブル対処に追われ、本来の事故収束作業に手が回らなくなる悪循環は、今もなくならない。事故から12年9カ月がたっても、廃炉に向けた核心部となる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しや、汚染水の発生ゼロへの明確な道筋はない。廃炉とはどのような状態なのかもあやふやなままだ。
 今月18日の規制委の検討会で、福島県大熊町商工会の蜂須賀礼子会長は不信感をあらわにした。「東電にはリスクに気づける力量があるのか」。基本的な疑問を投げかけられる東電が、柏崎刈羽の再稼働に向かうことになる。

 福島第1原発の廃炉計画
 事故が起きた2011年時点の計画では、21年内に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し開始と汚染水の発生ゼロを達成し、41〜51年に1〜4号機建屋を解体することになっていた。19年に改定した現行計画には、汚染水ゼロと建屋解体の目標自体がなくなった。2号機の試験的なデブリ取り出しも準備が難航。23年度内の開始目標は遅れる可能性がある。

<連載 「約束」の今 東京電力と原発>全3回
 福島第1原発事故を起こした東電が、柏崎刈羽の再稼働に向けて自らに課した「約束」は守られているのかー。その現在地を見た。(渡辺聖子、小野沢健太が担当しました)
KEY_WORD:ALPS洗浄_廃液浴びる_:FUKU1_:KASHIWA_:汚染水_:廃炉_: