[2023_09_10_04]橘川武郎氏「岸田政権は原発やるやる詐欺だ」(毎日新聞2023年9月10日)
 
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橘川武郎氏「岸田政権は原発やるやる詐欺だ」

 橘川武郎氏に聞くエネルギー政策(2)

 「岸田政権は、やるやる詐欺だ。原子力をやるといっているが実際には進まない。運転期間の延長で、むしろ遠のいたと思う」。こう語るのは東京大学・一橋大学名誉教授で国際大学学長の橘川武郎氏(日本経営史・エネルギー産業論)だ。岸田政権は原発の新増設や次世代革新炉の開発を「やる」といっているが、橘川氏は「やるやる詐欺」と主張する。一体どういうことか。

 橘川氏は8月28日、東京財団政策研究所主催のシンポジウムで講演した。筆者が後日、橘川氏にインタビューすると、講演では聞けなかった話が次々と飛び出した。
 岸田政権は原発の運転期間について、原則40年、最長60年だった「40年ルール」を改め、60年超の運転を可能にする原子炉等規制法(炉規法)などの改正に踏み切った。脱炭素社会への移行を進める「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けた基本方針」も閣議決定し、次世代革新炉と呼ぶ原発の技術開発に約1兆円を投じる方針も明らかにした。
 これまで自民党の歴代政権が封印してきた原発の新増設や建て替え(リプレース)にも岸田政権は道を開き、総じて電力業界が望む「原発回帰」を進めているように映る。「次世代革新炉はまるでお飾り」
 ところが橘川氏は「次世代革新炉の開発に約1兆円といっても、GXへの投資総額150兆円の中では最も少ない。投資額は再生可能エネルギーが約20兆円、水素・アンモニアが約7兆円、蓄電池が約7兆円で、次世代革新炉はこれらに及ばない」と指摘する。150兆円とはGX経済移行債による20兆円に民間投資の130兆円を合わせた今後10年間の投資額だ。
 GX基本方針に盛り込んだ次世代革新炉について、橘川氏は「まるでお飾りのようで、基本方針に入れておかなくてはまずいから盛り込んだという感じだ。つまり現実性がないということが表れてしまっている」という。
 橘川氏は「小型モジュール炉、高温ガス炉、高速炉など次世代炉の開発には有意義なものもあるが、『絵に描いた餅』だろう。(後略)
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