[2023_09_10_03]東電福島第一原発から汚染水を海に流すな 汚染水放出、何が問題か 溶けた核燃料に接触した汚染水を海洋放出することは 国際法の精神にも反する 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年9月10日) |
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1.汚染水発生を止めなければ解決しない 東電は福島第一原発事故以来、汚染水発生を止めることができていない。 市民団体や専門家により様々な対策が提案されてきたが、検討もしないまま「海洋放出ありき」で8月24日に放出を強行したことに強い憤りを禁じ得ない。 最優先で取り組まなければならないのは、敷地から放射性物質の再放出を、如何なる場合でも防止できる対策を行うこと、汚染水の発生を止めることである。これが最優先。 デブリの取り出しなどは汚染を固定して再流出の防止ができてから時間を掛けて行うべきことである。 2.原発事故後に長期間経過しての汚染水放出は例がない 1979年のスリーマイル島原発事故、1986年のチェルノブイリ原発事故、いずれも汚染された水を回収し安定化処理が行われてきた。 ソ連崩壊後に軍事施設の汚染水が日本海に投棄された際は、日本政府は強く抗議し、汚染水を処理する設備を供与して汚染水放出を中止させた。 今回の日本の対応は全くその逆であり、事故から12年も経ってから代替案があるのに海洋放出に踏み切った。 既に事故時には大量の放射性物質が大気や海や地上に拡散し多くの被害を出している。 これに加えて放射性物質を追加放出することは如何なる理由があっても認められない。 処理した水であろうと溶けた燃料に接触した汚染水を海洋放出することは国際法の精神にも反する行為で許されない。 3.「汚染水」とは何か 国と東電が「処理水」を放出するとしている「ALPS処理」の原理は、最初に沈殿槽で汚泥や鉄系の放射性物質を取り除き、その後、放射性物質ごとに異なる吸着剤のシリンダーを複数通して、国の定める濃度限度以下にまで減らすことを目的としている。 トリチウム以外の核種のうち、取り除くことが難しいものは残る。 炭素14はその一つで、ALPSを通す前から規制濃度以下であるため、この装置で減らすことは期待されていない。 「ALPS処理水」とは、2021年4月13日に政府が閣議決定した際「告示濃度比総和1未満の水をいう」と定義された。 東電によると今ある134万トンのうち、告示濃度比総和1未満は3割程度であるとされている。 つまり国の定義でも「ALPS処理水」は3割しかなく、他の7割は全て「未処理水」つまり汚染水である。 タンクの映像を流しながら「ALPS処理水」と称するのは間違いである。 4.薄めて流せば良いのか? 放出濃度が低くても総量が大きければ、環境や人体にも影響を与える。 トリチウムを例に挙げれば、大気圏核実験の時代には雨水中に1リットル当たり100ベクレルもの濃度があったが、その後トリチウムの量は減り続けている。 しかし原発や再処理工場が稼働し始めた1970年代以降は、またしても放射性物質が環境中にまき散らされた。 他の核種についても同様で、追加で放出されれば環境中から人々を被ばくさせる確率は上がる。 それが僅かであっても追加被ばくであり、それを認めなければならない理由は私たちにも世界中の人々にも存在しない。 薄めて流そうが、リスクが高まる以上、環境や健康影響を受忍しなければならない理由はない。 5.「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」は? 福島県民や漁民には、残念ながら、国の決定は覆せない国が強行したらどうしようもないとの「諦め」の気持ちが広がっている。 理解という言葉は魔法のように都合よく使われ、「やむを得ない」「仕方がない」との感情までもが取り込まれている。 全漁連会長は「約束は守られてもいないし、破られてもいない」と語っている。 皆が諦めることを国も東電も見越した上での強行である。本当の抵抗はしないだろうと。そこまで甘く見られている。 (9月10日「救援連絡センター」発行「救援」第653号より 了承を得て転載) |
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