[2023_09_07_08]橘川武郎氏「賛成でも反対でも原発は当てにならない」(毎日新聞2023年9月7日)
 
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橘川武郎氏「賛成でも反対でも原発は当てにならない」


 橘川武郎(きっかわ・たけお)氏に聞くエネルギー政策(1)

 「好きか嫌いか、賛成か反対かではなく、原子力は当てにならない」。こう語るのは東京大学・一橋大学名誉教授で国際大学学長の橘川武郎氏(日本経営史・エネルギー産業論)だ。「原発が当てにならない」とはどういうことなのか。橘川氏を直撃して聞いた。
 橘川氏は8月28日、東京財団政策研究所主催のシンポジウムで冒頭の発言を行った。橘川氏は「原子力に正しい部分があったとしても、もはや頼りにならない。原子力に頼るウエートを小さくして、再生可能エネルギーを普及させていく必要がある。この問題は既に決着がついている」とも述べた。気になる発言の真意を知りたくて後日、橘川氏にインタビューした。

 原発推進でも「もうこれ以上は使えない」

 「原子力は次世代革新炉を作るとか、バックエンド(注1)の問題などがしっちゃかめっちゃかになっている。その意味で当てにならないと申し上げた。原子力を推進する立場に立つとしても、『もうこれ以上は使えない』と認めざるをえないということだ」
 筆者の質問に橘川氏はこう答えた。ちょっとわかりにくいが、原発は使用済み核燃料の処分など解決すべき課題が多く、岸田文雄政権が目指す次世代革新炉の開発や原発の新増設はコストがかかるので現実には進まない。要するに原発は課題が多く、もうこれ以上増やしたくても増やせないということらしい。念のため橘川氏に確認すると「そういうことだ」という答えが返ってきた。
 「岸田政権が『次世代革新炉を作る』などといえば、本当は電力業界が喜ぶはずなんだけど、スルーしている。考えてみれば当たり前で、新たな原発を建設すれば5000億円から1兆円はかかる。ところが古い原子炉の運転を延長できれば、(安全対策などを)高く見積もっても数百億円で済む」と橘川氏は話す。
 運転延長とは、原発の運転期間を原則40年、最長60年としていた従来の「40年ルール」を岸田政権が改め、60年超の運転を可能にするよう原子炉等規制法(炉規法)などを改正したことを指す。(後略)
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