[2023_11_09_01]「米国初」小型原発、建設計画を中止 インフレ直撃(日経新聞2023年11月9日)
 
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「米国初」小型原発、建設計画を中止 インフレ直撃

 11:01
 【ヒューストン=花房良祐】米国の小型原子力発電設備を開発中のニュースケール・パワーは8日、米西部アイダホ州での小型原発の建設計画を中止すると発表した。実現すれば米国初の案件となるはずだったが、インフレや金利高で建造費などが高騰しており、経済性が見込めなくなった。
 日本企業は小型原発に期待していただけに、「米国初」案件の頓挫は失望につながりそうだ。IHIや日揮ホールディングスはニュースケールに出資しており、原発の建造や部品製造に協力する方針だった。このほか中部電力も9月、ニュースケールに出資すると発表。日本への事業展開を期待していた。
 計画では、アイダホ州の国立研究所に1機あたり出力約7万7000キロワットの発電設備を6機設置。初号機の稼働開始予定は2029年で、米国の第1号案件となるはずだった。
 だがインフレで資材・人件費が高騰した。ニュースケールは23年1月、初号機の発電コストが当初計画より約5割高い1キロワット時あたり8.9セント(約13円)になるとの見通しを明らかにした。ユタ州の電力会社などに売電する予定だったが、顧客に転嫁できない水準までコストが上昇した。
 小型原発は工場でモジュールを製造して現場に据え付けるため、従来の大型原発より初期投資が少なく、設計・建設費用が膨張する可能性が少ないとされていた。
 加えて、原発は温暖化ガスを排出しない。天候に左右される太陽光・風力発電を補完する役割に期待して、バイデン政権は小型原発の開発を支援していた。
 一般的にプラントの初めての案件の設計・建造はノウハウが蓄積されていないため、コスト増加のリスクが高い。ニュースケールは想定外のインフレが直撃し、初号機の「生みの苦しみ」に直面しているといえそうだ。
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