[2023_10_17_02]大手電力出力制御 使われない再エネ増へ 解消には巨額投資必要(東奥日報2023年10月17日)
 
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大手電力出力制御 使われない再エネ増へ 解消には巨額投資必要

 大手電力会社の出力制御が2023年度上半期、過去最多を記録した。政府は30年度の電源構成に占める再生可能エネルギー比率を36〜38%に高める目標を掲げ、再エネの導入が進むものの一部が実際に使われず、当面はさらに増える見通しだ。事態解消には巨額投資と長い時間を要する。

 「今年に入って出力制御の回数が急に増えた。売電量が大幅に減って痛手だ」。ある再エネ発電業者の担当者は嘆く。「全ての業者を公平に扱っているのかブラックボックスになっている」と不満顔だ。
 西村康稔経済産業相は「再エネの導入拡大を進めるにはできる限り出力制御量を減らすことが大事だ」と強調する。一方で「出力制御をゼロにするために投資をすれば、その分電気料金が高くなってしまうので難しい」と電力関係者は漏らす。
 再エネを最大限活用するには、発電に適した地域と電気を大量に消費する地域を結ぶ送電網の増強が必要だ。全国の電力会社が加盟する電力広域的運営推進機関は、50年の脱炭素社会の実現に向けた送電網整備計画で、基本シナリオでは投資額を計約6兆〜7兆円と見込む。
 こうした長い道のりを前に、経産省は二酸化炭素(CO2)の排出量が多い火力発電の出力を広域で抑える方針だ。火力発電所の出力上限も現行の50%から30%に引き下げる。
 電力会社も対策に乗り出している。22年度からは送配電事業者の指示に基づき遠隔で出力を抑える「オンライン制御」を導入。再エネ事業者が現場に出向いて調整するよりきめ細かく作業でき、制御量を減らすことが可能だ。
 九州電力は今年、出力制御の実績が多い10〜11月の日中に、オール電化家庭を対象に電気料金の実質無料化を打ち出した。アプリを通じて前日に電気を使ってほしい時間を通知し、その時間帯の電気料金分をPayPay(ペイペイ)で還元する。
 半面、家庭の節電意識は根強く、逆となる取り組みを促すのは難しい。九電担当者は「意識付けが重要だ。参加世帯を増やして将来的には出力制御の防止につなげたい」と話す。
 北海道と東北では今後、風力発電の増強に伴って出力制御が増えるとみられている。資源エネルギー庁の長期的な想定によると、送電網増強などの対策を取らなかった場合に北海道・東北で50%、中国・九州で25%以上の再エネ電力が失われてしまう。
 「需要が少ない時期に電気料金を割り引くなど、再エネと向き合っていくしかない」と電力業界の関係者。脱炭素社会への道は険しい。
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