[2023_09_09_01]「政治力」にすがった風力の先駆者 洋上風力、大手に圧倒される(毎日新聞2023年9月9日)
 
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「政治力」にすがった風力の先駆者 洋上風力、大手に圧倒される

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 「年中、風が吹いていて風況が良い。ここで風力発電をやりたいんです」。日本で風力発電がまだ珍しかった2000年、青森県六ケ所村の農業法人事務所。発言の主は、衆院議員の秋本真利容疑者(48)=受託収賄容疑で逮捕=に賄賂を渡したとされる、風力発電会社「日本風力開発」の塚脇正幸前社長(64)だった。
 1年前に起業したばかりの前社長は当時、陸上風力発電の用地を全国で探していた。別件で東京から北海道に飛行機で向かっていたところ、機内から下北半島にある、ここの広大な丘陵地を見て適地だと直感した――。農業法人側にとって思わぬ提案だった。
 農業法人幹部は前社長の行動力に舌を巻いた。反対派向けに数十回開かれた説明会には毎回、前社長の姿があった。「みなさんの役に立ちたいんです」。熱弁とは言えないが、言葉には誠意があったという。発電所は3年後に稼働した。
 それから約12年後の16年4月。日本風力開発側は、事業で関係を築いてきた村に5000万円を寄付した。「信用できる人物だと思ってずっと付き合ってきたのに、事件とは」。法人幹部は、そうつぶやいた。

 「風力は日本の石油」

 塚脇前社長は大手商社の三井物産出身。1983年に入社して石油部門に配属され、80年代後半は英国に駐在した。風力発電先進地の欧州で風車を目の当たりにし、エネルギー自給率が低い日本にも必要との思いを抱く。
 業界関係者は「風力を事業化する提案が通らず、ベンチャーの道を選んだと聞いた。塚脇さんは『風力は日本の石油になる』と夢を語っていた」と証言する。(後略)
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