[2023_09_02_01]原発処理水の海洋放出 Q&A そもそも汚染水とは?トリチウムって?監視は?(東京新聞2023年9月2日)
 
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原発処理水の海洋放出 Q&A そもそも汚染水とは?トリチウムって?監視は?

 2023年9月2日 03時00分
 東京電力福島第1原発からの海洋放出が始まった処理水は、原発で発生が続く汚染水を浄化処理した後の水で、水素の仲間であるトリチウムが含まれています。どのような水で、どのような対策が取られているのでしょうか。本紙が報じてきたQ&Aをまとめました。

 ◆汚染水って?

Q そもそも汚染水はどうして発生するの?
A 1〜3号機内には事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)があり、原子炉に注水してデブリを冷却する作業が続いています。デブリに触れた水は、高濃度の放射性物質を含む汚染水となります。建屋の損傷部分などから入ってきた雨水や地下水と混ざって量が増え、2022年度で1日約90トン発生しました。デブリへの注水と、建屋内への水の流入を止めない限り、汚染水は発生し続けます。(8月8日公開)

Q タンクで保管中の処理水は全てが十分に浄化できているの?
A いいえ。多核種除去設備(ALPS=アルプス)の稼働当初は不具合が頻発し、汚染水の発生量も今より数倍多く、東電は十分な浄化よりも素早く処理することを優先しました。現時点でタンクに保管している約133万トンの処理水のうち、約7割が浄化が不十分で、トリチウム以外の放射性物質も国の排水基準を上回っています。(8月8日公開)

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 ◆トリチウムって?

Q トリチウムって何?
A 「三重水素」と呼ばれる水素に似た放射性物質。主に水素と同様に酸素と結び付き水となり、大気中の水蒸気や水道水、人間の体内など身の回りに存在します。放射線は紙1枚も通らないほど弱く、放射能は約12年で半減します。(7月15日公開)

Q トリチウムの人体への影響は?
A 体内に取り込んでも、ほとんどは水と一緒に排出され、内部被ばくの影響も低いとされます。東電が海水で薄めた処理水で魚を育てた実験では、魚の体内のトリチウム濃度は処理水の濃度以上にはならず、通常の海水に戻すと時間がたつにつれて体内のトリチウム濃度も下がりました。(7月15日公開)

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◆海の監視は?

Q 海洋放出を実施する東電の監視の取り組みは?
A 放出前と後のトリチウム濃度の変動をつかむための監視を2022年春から始めています。原発から60キロ圏内の計63地点で、海水と魚類、海藻類を調べています。放出開始後は、計画上の排水基準の半分未満となる目安値を設け、14地点の測定結果が1地点でも目安を超えた場合、「速やかに放出を停止する」としています。14地点のうち10地点は原発から3キロ圏内の放出口付近に、4地点は原発正面の10キロ四方にあります。東電は放出開始後の1カ月程度、3キロ圏内の10地点で測定回数を週1回から毎日に増やします。(8月24日公開)

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◆風評被害対策は?

Q 日本政府は水産物への風評被害対策にどう取り組むの?
A 海洋放出の方針決定後に創設した300億円の基金を活用します。販路を広げるための商談会の開催費用や、企業の社員食堂で利用してもらう際の調達費用などの使い道が想定されています。仮に魚の市場価格が下落するなどして一時的に冷凍保管する場合は、漁協などの団体が水産物を買い取る資金の借入金利や、出荷するまでの保管費用を全額支援します。ただ、漁協側は買い取り資金を自己調達し、冷凍保管した魚の販売先も自前で探す必要があります。(8月20日公開)

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