[2023_08_24_19]海洋放出、きょう開始…人や環境への影響は?監視は強化されるの? 放射性物質の監視<Q&A>(東京新聞2023年8月24日)
 
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海洋放出、きょう開始…人や環境への影響は?監視は強化されるの? 放射性物質の監視<Q&A>

 2023年8月24日 06時00分
 東京電力福島第1原発事故後、海水などに含まれる放射性物質を把握するため、国や東電などは周辺の海域でモニタリング(監視)を実施しています。処理水の海洋放出が始まってからも監視は続けられます。どのような取り組みなのでしょうか。(渡辺聖子)

 ◆1地点でも目安を超えたら「速やかに放出停止」

 Q 放射性物質の監視とは?
 A 国や東電、原子力規制委員会などが海水や海底の土、海洋生物に含まれる放射性物質の濃度を調べ、変動を見ています。分析の対象は主に放射性セシウムや、浄化処理で取り除けない放射性物質トリチウムです。測定地点は原発の港湾内から沖合300キロにまで及び、東京湾にもあります。最近の海水の測定結果は基準値よりも大幅に低く、トリチウムは検出されない地点も多くあります。

 Q 海洋放出が始まったら監視は強化されるの?
 A 国は放出直後に海水の測定回数や調べる放射性物質の種類を増やすなどします。また、結果をより早く公表するため、簡易的な分析方法を取り入れます。分析にかかる時間は従来の約1カ月から1〜2日程度に短縮されます。

 Q 海洋放出を実施する東電の取り組みは?
 A 放出前と後のトリチウム濃度の変動をつかむための監視を2022年春から始めています。原発から60キロ圏内の計63地点で、海水と魚類、海藻類を調べています。放出開始後は、計画上の排水基準の半分未満となる目安値を設け、14地点の測定結果が1地点でも目安を超えた場合、「速やかに放出を停止する」としています。14地点のうち10地点は原発から3キロ圏内の放出口付近に、4地点は原発正面の10キロ四方にあります。東電は放出開始後の1カ月程度、3キロ圏内の10地点で測定回数を週1回から毎日に増やします。

 Q 海洋放出による人や環境への影響は?
 A 極めて小さいとされています。東電は、放出による追加被ばくの放射線量は、公衆の被ばく限度(年間1ミリシーベルト)に比べて約3万分の1未満と説明しています。放出地点から2〜3キロの地点で、トリチウムの濃度は周辺の海水と同じになると評価しています。放出計画を検証した国際原子力機関(IAEA)は、7月に公表した包括報告書で「放射線影響は無視できる」と結論づけました。

 ◆「一定の理解を得られた」午後1時ごろにも放出開始

 政府と東京電力は24日午後1時ごろにも、福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出を始める。漁業者らが反対を続ける中、政府は「一定の理解を得られた」として放出開始に踏み切る。
 東電は22日、最初に放出する処理水1トンに海水1200トンを混ぜて放出前の水が入る水槽にため、浄化処理で取り除けない放射性物質トリチウムの濃度を測定するため7リットルを採水した。24日午前中に測定結果を公表し、濃度が国の排水基準の40分の1未満になっていることを確認した上で、海底トンネルを通じて沖合約1キロに放出する。17日間かけて約7800トンを流す。
 2023年度は処理水計約3万1200トンを4回に分けて放出予定。放出されるトリチウム総量は約5兆ベクレルで、計画で定める年間上限(22兆ベクレル未満)の4分の1程度となる見通し。
 震度5弱以上の地震発生や流量などの異常を感知した場合は放出を停止する。
 放出開始後、国や東電は原発周辺の海水などに含まれる放射性物質のモニタリングを強化する。漁業者や水産業者らが損害を被ったと申し立てた場合、東電が風評被害によるものかを判断して損害分を算出し、賠償する。
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