[2023_08_24_04]魚買ってもらえるのか 福島県内漁業関係者 処理水放出で風評発生へ不安の声 安全性県外に広めて(福島民報2023年8月24日)
 
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魚買ってもらえるのか 福島県内漁業関係者 処理水放出で風評発生へ不安の声 安全性県外に広めて

 2023/08/24 09:59
 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が翌日に迫った23日、福島県内の漁業関係者は「(放出後も)福島の魚を買ってもらえるのだろうか」と新たな風評発生へ不安の声を上げた。東日本大震災、原発事故から12年。安全性を確保し、「常磐もの」の品質の良さを発信し続けて海産物直売所には県外からの客が増えつつある。それだけに、関係者は国や東電に検査体制の徹底や風評を発生させないための県外への正確な情報発信強化などを求めている。
 相馬市のカネヨ水産が松川浦沿いで営む海産物直売所は連日、県内外の客でにぎわう。ここ数日、複数の常連客から「放出が始まる24日より前に取れた魚を送ってほしい」という電話注文があった。社長の小野芳一さん(41)は「想定していた」と胸の内を明かす。
 漁協などと連携し、地道な放射性物質検査や、県外での販促活動などで消費拡大を図ってきた。「(24日以降に)不安がないわけではないが、今まで通りしっかり検査し、安全でおいしい魚をお客さんに届けたい」と前を向く。
 市内の「浜の駅松川浦」は新鮮な魚介類や加工品などを販売する人気スポットだ。この時期はホッキ貝やシラスなどがよく売れる。駐車場には仙台や山形ナンバーの車、関東方面からのバイクが並ぶ。7月の来場者数は前年同月比で120%ほどになった。
 ほとんどの客は、県産魚介類の安全性を理解した上で購入してくれる。ただ、副店長の佐藤武男さん(63)は「処理水の放出が客足にどう影響するのかが見通せない」と表情を曇らせる。今後、県外に向けた情報発信が必要と訴える。「遠方から人が来なくなれば、宿泊業や飲食業もダメージを受ける。国は安全性をもっと広めるべきだ」と注文した。
 宮城県柴田町から友人と訪れた介護士女性(66)は昨年、相馬の新鮮な魚を食べファンになった。「処理水の放出は気にはなるが、買い控えはしない。買って、食べて応援したい」と話した。
 いわき市には首都圏方面からの観光客が多い。漁業関係者は観光への影響を注視する。
 水産加工業「上野台豊商店」の社長上野台優さん(47)が最も恐れているのは、県外の観光客に敬遠されることだ。「選んでもらえなければ人が訪れず、地域としての魅力も落ちる」と危機感を抱く。「消費者の不安を引き続き解消し、商品力を上げていくしかない」と語る。
 9月1日に沖合底引き網漁が解禁され、魚種が増えて港は活気づく。政府は国際原子力機関(IAEA)の確認を受けながら毎日、放射性物質の検査データを公表するとしている。市内の鮮魚店で働く60代女性は「『安全』という言葉はよく目にするが『安心』の部分は何も伝わっていない」と政府、東電の情報発信の在り方に疑問を呈した。
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