[2023_08_23_01]原発処理水の風評被害は東電が「適切に賠償」 その仕組みに納得できるか 過去には「不十分だ」と裁判に(東京新聞2023年8月23日)
 
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原発処理水の風評被害は東電が「適切に賠償」 その仕組みに納得できるか 過去には「不十分だ」と裁判に

 2023年8月23日 06時00分
 東京電力福島第1原発の汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出で起こる可能性がある風評被害については、東電が被害の有無を判断し、それに応じて賠償する。被害の大小は、放出前後の卸売市場や国などの統計データなどを基に把握する仕組みだ。(渡辺聖子)

 ◆判断するのは「加害者側」 被害額は統計データで

 東電はこれまでに、漁業、農業、水産加工業・水産卸売業、観光業を対象に賠償基準を公表した。価格下落や売り上げ減少による損害を支払い対象とする。
 データで判断できない場合、実態を確認するとしているが、これまでの賠償でも被害者側が「過小評価だ」「不十分だ」と裁判を起こしたケースも多い。被害を訴える側が、事故を起こした加害者側の東電の判断に納得するかは不透明だ。
 国内消費の被害だけではなく、外国の輸入規制で被害を受けた国内事業者にも適用される。日本産食品に対する外国の輸入規制を巡っては、中国など7カ国・地域が継続しており、処理水の海洋放出を前に規制を強める動きも出ている。

 ◆政府は300億円の基金を創設

 22日に東京都内で記者会見した東電福島復興本社の内田正明副代表は「中国の禁輸措置などで被害が出ているという申し出を数件受けている」と明かし、対応する意向を示した。
 「処理水の処分が完了するまで政府として責任を持って取り組む」と明言した岸田文雄首相。風評被害対策として政府は、水産物への被害を抑制するために300億円の基金を創設した。漁協などによる一時買い取りや冷凍保管、その後の販路開拓の取り組みに充てる。経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「まずは緊急避難的に基金を活用してもらい、それでも被害が生じれば、適切に賠償されるよう東電を指導していく」と話した。
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