[2023_08_07_01]見えぬ汚染水「ゼロ」 見通しないまま迫る処理水海洋放出 福島第一原発(東京新聞2023年8月7日)
 
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見えぬ汚染水「ゼロ」 見通しないまま迫る処理水海洋放出 福島第一原発

 東京電力福島第一原発では、政府が「夏ごろ」とする汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出の開始が迫る。原子炉建屋への地下水や雨水の流入防止策が進み、汚染水の発生量は減少傾向。だが、汚染水の発生そのものを止める手だてはなく、根本的な解決は遠い。(小野沢健太)

 ◆凍土遮水壁 老朽化でトラブル相次ぐ

 1〜4号機を囲んで地中に氷の壁を造り、地下水の流れを遮断。国費345億円を投じて建設されたが、あちこちから水が入り費用対効果に疑問の声が強い。2016年に凍結を始め、老朽化のため凍結管から冷却液が漏れる事故も相次ぐ。

 ◆舗装は道半ば 放射線量高く工事難しい場所も

 地面の土から雨水が地中に染み込み、建屋に流入。凍土壁の内側は40%が舗装済み。昨年度から10%分進展した。放射線量が高いがれきが残るなど施工が難しい場所もある。東電は28年度に80%の施工を目指す。

 ◆屋根の補修は工程遅れ 建屋周囲の井戸で地下水をくみ上げ

 水素爆発で建屋上部が吹き飛んだ1号機は、雨水の流入を防ぐ排水ルートの構築が進んだ。難航していた屋外配管の撤去作業が7月に終わり、建屋への大型カバー設置を進める。
 建屋周囲には井戸があり、地下水をくみ上げて流入を抑えている。事故前は57本の井戸が稼働していたが、津波で多くが損壊。現在は46本が復旧や新設して稼働している。

 ◆処理水タンクの容量には余裕 それでも政府と東電は海洋放出を急ぐ

 東京電力の予測では、処理水を保管するタンクが満杯になるのは「来年2〜6月」。昨年度は降水量が少なかったとして、実績よりも多めに汚染水が発生する前提で予測した。昨年7月から1年間の実績値で予測すると、来年9月まで容量に余裕がある。
 東電や政府は、事故収束作業のためにタンク敷地を新たな設備の用地として空ける必要があるとして、「今夏ごろ」に処理水の海洋放出を始める方針だ。しかし、いつごろどのような設備がどれほどの広さで必要になるのかなど、詳しい見通しは示されていない。根拠がはっきりしないまま、なし崩し的に放出開始へ向かおうとしている。
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