[2023_08_03_12]「中間も原発もいらない」揺れる人口2300人の町 山口・上関(毎日新聞2023年8月3日)
 
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「中間も原発もいらない」揺れる人口2300人の町 山口・上関

 新たな計画が、住民の分断を深めた。中国電力(広島市)が2日明らかにした、山口県上関(かみのせき)町を舞台にした原子力発電所の使用済み核燃料を一時的に保管する「中間貯蔵施設」を巡る計画。関西電力(大阪市)との共同計画で、大量の使用済み核燃料が集まる可能性も否定できない。瀬戸内海に面する人口約2300人の町が揺れている。

 「中間(貯蔵施設)も原発もいらない」「負の遺産はいらない」「危険なものを持ってくるな」――。
 2日午前、上関町役場前。中間貯蔵施設の建設に向けた調査を説明するため訪れた中国電の大瀬戸聡・常務執行役員ら3人に、反対派の町民ら約40人が「使用済核燃料 おことわり」と書かれた横断幕を広げながら詰め寄った。警察官も出動し、大瀬戸氏らが役場の裏口に回ることを余儀なくされるまで、混乱は約20分間にわたり続いた。
 上関町では1982年に中国電による原発の建設計画が浮上して以降、計画への賛否を巡って町民が分断。町長選は賛成派と反対派が対立する場となってきたが、無投票だった2015年と19年を除き、前回22年10月まで10回連続で推進派が当選してきた。
 前回選で初当選した西哲夫町長も、人口減少や高齢化に歯止めがきかない町の現状に対する危機感から、原発計画推進の立場を取った。計画が遅々として進まないことから、23年2月以降は国や中国電に対し、雇用創出などにつながる新たな振興策の提示を求めていた。
 中国電側からの説明後、町役場で報道陣の取材に応じた西氏は「原発(の建設計画)が不透明な中、何もせずに10年もたせられるかというと相当厳しいと思う」と述べ、中間貯蔵施設の建設計画に一定の理解を示した。その上で、調査の是非については「議会の判断を仰ぐ」として、臨時会を開いて意見を求めたい意向を明らかにした。
 西氏はその後、反対派の住民ら約30人を町長室に迎え入れ、話し合いの場を設けた。
 出席した住民によると、西氏はまちづくりのあり方について自身の考えを伝えてきた。住民側からは「臨時会を開くのは早くないか」と疑問の声も上がった。西氏は「建設まで時間はある。中国電から結果を聞き、それから判断をすればいいのでは」と述べ、住民から要望があれば現地視察の機会を設ける考えも示したという。
 西氏との面談に同席した清水康博町議は終了後、報道陣に「中間貯蔵施設が『安全』と言われるのは、比較の対象が原発だからだ。施設がどういうものか、なぜここに必要なのか、十分に説明した上で議会に諮るべきだ」と強調した。
 清水氏は、原発建設予定地の対岸の祝島に住む。「原発の建設計画が40年前に浮上してから町は分断され、苦しんできた。40年以上苦しんできた町民の思いを、中国電はないがしろにしている」と憤った。
 「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の運営委員、木村力さんは「奇麗な自然の魅力にひかれた若者が祝島に来ているのに、中間貯蔵施設が建ったら、いなくなってしまう。原発のお金ではなく自分のお金で生きていく、誇りある生き方をしたい」と穏やかな口調で語った。
 原発建設計画を巡っては、県は中国電の申請を受けて建設に向けた公有水面の埋め立て免許を08年10月に許可した後、これまで3回延長を認めている。東京電力福島第1原発事故の翌年の12年には中国電の延長申請について判断を先送りしたが、その後は申請の翌月に許可をしてきている。
 今回の中間貯蔵施設の建設に向けた動きについて、村岡嗣政知事は「今後の推移を見守りたい」とするコメントを発表した。【脇山隆俊、福原英信、山本泰久】
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