[2023_07_30_06]中国、ロシア核物質の輸入最大 22年、新設の高速増殖炉向けか(静岡新聞2023年7月30日)
 
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中国、ロシア核物質の輸入最大 22年、新設の高速増殖炉向けか

 【北京共同】中国が2022年にロシアから調達した原発用核物質の輸入額が、統計を確認できる15年以降で最大の4億9千万ドル(約690億円)に上ったことが29日、分かった。年内にも稼働させる新設の高速増殖炉向けに核燃料を受け入れた可能性がある。高速増殖炉では核兵器に使う高純度プルトニウムを生成できる。中国は米国に対抗して軍事力を強化しており、ロシアの協力を受けながら核戦力増強に利用する恐れがある。国際社会の懸念が高まりそうだ。

 中国税関総署のデータベースによると、中国がロシアから輸入した濃縮度の高いウランやプルトニウムなどを含む原発用核物質は、15年が約1億9千万ドルで、19年は3億ドルに迫った。減少する年もあったが、22年の4億9千万ドルは突出して多かった。
 中国は福建省霞浦県で高速増殖炉「CFR600」を建設中。計2基のうち1号機は年内稼働が見込まれる。既に燃料の受け入れが始まっているもようだ。米メディアや英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の資料によるとロシアは22年9〜12月に複数回にわたり、CFR600の核燃料計25トンを輸出した。
 原子力の専門家は共同通信の取材に対し、CFR600が本格稼働すれば、核兵器に用いる純度の高いプルトニウムを年間200〜300キロ生成し「核弾頭100〜200発程度の製造が可能な量になる」と指摘した。
 中国は運用可能な核弾頭を、現在の推計400発超から、35年に1500発に増やすとの予測もある。大量のプルトニウムを必要としている。
 RUSIは、ロシアはウクライナ侵攻後も原子力分野では経済制裁の影響が限定的で、中国以外にもハンガリーやトルコ、インドなどに供給を続けていると指摘した。
 今年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で首脳らは「核軍縮に関する広島ビジョン」を発表。中国の透明性を欠いた核戦力増強は「世界や地域の安定にとっての懸念」だとし、民生用を装った軍事用プルトニウムの生産や支援への反対を表明した。

 中国の高速増殖炉 通常の原発(軽水炉)と異なる高速増殖炉は、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出す。中国では国有企業の中国核工業集団が福建省霞浦県で「CFR600」計2基を建設中で、1号機は2017年、2号機が20年に着工した。それぞれ23年と26年の稼働が見込まれる。高速炉の研究開発で先頭を走るロシアの企業が核燃料を製造し、中国に供給している。
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