[2023_07_28_09]環境エネルギー最前線 欧州識者が語る「日本はなぜ再エネより原発保護なのか」(毎日新聞2023年7月28日)
 
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環境エネルギー最前線 欧州識者が語る「日本はなぜ再エネより原発保護なのか」

 識者に聞く欧州の「原発推進VS脱原発」(下)

 「日本には風力、太陽光、地熱などがたくさんあります。再生可能エネルギーとして利用すれば国際収支が改善し、もっと豊かになれるはずです。残念なのは原発を抱える大手電力を政府が保護していることです」。スウェーデンの元エネルギー庁長官で、欧州の電力事情に詳しい自然エネルギー財団(東京都港区)のトーマス・コーベリエル理事長(62)はこう語る。一体どういうことなのか。

 ――欧州ではドイツ、イタリア、オーストリアなど脱原発の国もあれば、フランス、英国、フィンランドなど原発推進の国があります。この違いはどこから来るのでしょうか。

 ◆二つのグループといっても、実際に各国で何が起きているかを見た方がよいでしょう。原発推進と言われる国でも再エネは増えており、脱原発と言われる国とそれほど大きな違いはありません。

 英国とフランスは核兵器を保有しているので、核兵器の製造に必要な物質を調達できる原発が重要なのです。フランスのマクロン大統領は「原子力は民生と軍事の両方が必要だ。民生と軍事には相互依存関係がある」と強調しています。

 スウェーデンやベルギーの紆余曲折

 ――理事長の母国スウェーデンはどうなのでしょうか。脱原発ではこれまで紆余(うよ)曲折があったと聞きます。

 ◆かつて原発を持った多くの国には核兵器を持とうとする野心がありました。1960年代のスウェーデンもそうで、政府は70年代初頭まで核兵器を開発しようとしていました。ところが米国スリーマイル原発事故で原発をめぐる議論が起き、80年に国民投票を行いました。その結果、原発の運転開始から25年で廃炉にすることを決めたのです。

 スウェーデンで最後の原発の運転開始は85年なので、2010年には廃炉になり、全基停止するはずでした。ところが、この決定は複数回変更になりました。それでも採算の悪い古い原発を廃止したため、10基以上あった原発はいま6基になりました。今の政権は原発推進ですが、再生エネに比べて採算が悪いので、原発の新設はさすがにないと思います。

 ――ベルギーは原発を25年までに閉鎖する予定でしたが、ロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギーの供給不安から稼働の延期を決めたと聞きます。

 ◆私もそう聞いていますが、ベルギー政府の方針はまた変わるかもしれません。という(後略)
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