[2023_07_22_07]環境エネルギー最前線 欧州識者に聞く「脱原発ドイツとフランスの意外な関係」(毎日新聞2023年7月22日)
 
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環境エネルギー最前線 欧州識者に聞く「脱原発ドイツとフランスの意外な関係」

 識者に聞く欧州の「原発推進VS脱原発」(上)

 ドイツは脱原発を達成したが、隣国のフランスから原発の電力を輸入している――。日本ではそんな論調をよく耳にするが本当なのか。スウェーデンのエネルギー庁元長官で、欧州の電力事情に詳しい自然エネルギー財団(東京都港区)のトーマス・コーベリエル理事長(62)に聞くと、ドイツとフランスの意外な関係が浮かび上がった。

 ――ドイツは2023年4月、最後まで残った原発3基を停止しましたが、フランスから原発の電力を輸入していると言われることがあります。実際にドイツはフランスから電力を輸入しなければいけないのでしょうか。

 ◆欧州諸国は各国間が送電網でつながっており、電力を融通し合っています。ドイツとフランスも相互に融通しており、輸入と輸出を差し引いた正味(ネット)で、どちらが多いか判断する必要があります。

 独仏の正味の電力輸出入は?

 ――「独仏間で多少の電力融通はあるが、フランスから大量の電力を受けている事実はない。輸入している時もあるが、風が強い時などドイツの風力発電の電力をフランスに輸出している」と、ドイツ連立与党「緑の党」の国会議員に聞いたことがあります。

 ◆その通りです。隣国同士の電力融通は欧州でいつも起きています。まず事実から申し上げると、年間を通してドイツがフランスから正味で電力を多く輸入している事実はありません。その逆で、ドイツは15年から毎年、フランスに正味で電力を輸出しています。自然エネルギー財団のリポートにある通りです。

 ――フランスはこれまで電力の約7割を原発で賄ってきました。ところが22年は安全対策や配管のトラブルなどで約半数の原発が停止したと聞きます。ドイツの輸出が多かったのは22年だけではないのですか。

 ◆フランスは21年まで欧州で最大の電力輸出国でしたが、22年は多くの原発が停止したため輸入国に転じました。しかし、21年以前の独仏間の電力輸出入を比べても、ドイツが年間を通してフランスから電力を… (後略)
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