[2023_07_22_04]電力カルテル 改善命令 消費者への裏切り(東奥日報2023年7月22日)
 
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電力カルテル 改善命令 消費者への裏切り

 電力カルテルに関連し、大手電力グループの一部に経済産業省が業務改善命令を発出した。大手電力には、新電力の顧客情報不正閲覧でも改善命令が出ており、改善命令が連発される異常事態である。電力自由化以降、競争原理が働きコスト削減努力をしてきたはずだと思っていた消費者や、契約企業への裏切りのそしりは免れない。電力業界では近年、深刻な不祥事が続いており、信用の構築は容易でない。
 今回、経産省から改善命令を受けたのは関西電力、中部電力子会社、中国電力、九州電力、九電子会社の5社。このうち関電以外の4社は事業者向け電力販売でカルテルを結んだとして公取委が独禁法違反を認定し、総額1010億円に上る課徴金の納付を命じた。関電は自主的に違反を申告し課徴金は免れている。
 違反行為は電力全面自由化から一定期間たってから始まり、自由化が骨抜きにされていたと言って過言でない。707億円と最大の課徴金を受けた中国電は、社長と会長がそろって引責辞任する事態に発展。6月末の各社の株主総会で「不正のデパートだ」(関電の株主)と批判の声が噴出したのは当然である。
 今回の改善命令では、業界団体である電気事業連合会の活動の在り方についても指導があった点に注目したい。
 電事連は大手電力が会員となって構成する業界団体である。東京・大手町の経団運会館の中に事務所を構え、電力各社からの出向者が業務に当たっている。東京電力福島第1原発事故までは東電が強力な指導力を発揮し、霞が関、永田町との付き合い方を含め電力業界の所作を、机を並べる東電出向者から学び、完壁に身に付けて本社に持ち帰るのが使命だった。
 同じ釜の飯を食った出向者の絆は強く、各社が有望な人材を投入するため、経営幹部になるケースも多い。原子力という特殊な国策民営事業を担ってきた電力業界にとって、電事連の統合力、組織力は他の業界団体とは異質な存在と言える。
 経産省は、電事連の会合で知り合ったり、出向していたりした者同士が違反行為に関連する情報交換をしていたとした公取委の指摘に触れ、電事連が不正の温床にならぬよう改善を求めた。
 物価が高騰し、企業、家計とも日常のコスト管理にきゅうきゅうとしている。帝国データバンクが千社超に聞いた調査では、1年前からの電力コスト増は平均39・4%に達した。政府の物価高対策による電気代の補助が縮小されれば、やりくりは厳しさを増す。
 電力業界が、このタイミングで問題が露呈した運の悪さを嘆くとしたら筋違いだ。エネルギーは国民経済の基盤である。原子力政策はもとより、国民の信用と賛同なくしてエネルギー政策は遂行できない。電力業界は自浄能力を発揮できるか。業界の談合体質を反省し自由化が画餅に帰さぬよう、電事連は自ら抜本改革を断行しなければならない。
(共同通信編集委員・宮野健男)
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