[2023_07_20_05]処理水放出、宮城漁協「容認できず」 渡辺復興相と面会(福島民友2023年7月20日)
 
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処理水放出、宮城漁協「容認できず」 渡辺復興相と面会

 東京電力福島第1原発事故の処理水海洋放出を巡り、政府が各地で漁業者への説明を続けている。19日には渡辺博道復興相が宮城県漁協幹部と面会、いわき市では政府、東電関係者が市漁協の幹部らと意見交換した。県内外の漁業関係者からは再び放出反対の声が相次ぎ、政府と漁業者の距離は縮まらなかった。中国が日本産海産物の放射性検査を強化するなど、放出を前に吹き始めた向かい風も漁業者の懸念を強めている。
 「安全・安心と言われても風評は必ず起きるものだ」。宮城県塩釜市で渡辺氏と面会した宮城県漁協の寺沢春彦組合長はこう切り出し、放出反対の立場を改めて主張した。言葉の背景には処理水の放出に対抗して強硬策を打ち出す中国、香港などの存在がある。同県ではすでに一部の魚介類の取引価格が低下傾向にあるといい、寺沢氏はこれを「実害」と指摘。「対策を講じなければ、放出を容認する立場にはなれない」と強調した。
 意見交換は冒頭のみ公開され、渡辺氏は処理水の処分を「東北の復興を進めるためにも先送りできない課題」として理解を求めた。出席した同県漁協役員の一人は「東北や福島の復興のために(放出は)必要だと分かる」と、説明には理解を示しながらも「不安しかない」と打ち明けた。放出によって起きた風評被害は賠償で保障される見込みだが、長期の賠償は漁業の意欲停滞につながるかもしれないというジレンマがある。「保障が前提になり、汗をかいて努力しない状況が続けば、将来的になりわいは成り立たなくなるだろう」。渡辺氏は意見交換後の報道陣の取材に「(放出を)いつまでに、ということはない」と時期ありきではないとした上で、今は丁寧な説明が必要だと強調した。

 いわき漁協 政府の説明不足指摘

 「夏ごろ」とする放出開始が迫り、政府は各地で漁業関係者らへの説明の機会を増やしている。県内では18日の相双漁協に続き、いわき市で市漁協幹部と政府の担当者らが意見交換した。出席者からは海外の輸入自粛の動きのほか、他県市場で取り扱い控えの恐れがあるなどとして、政府の安全性に対する説明や手腕不足を指摘する声が上がった。
 小名浜機船底曳網漁協理事の柳内孝之さん(57)は、宮城県のホヤが主要輸出先の韓国で禁輸が続く状況に触れ、「はっきり言って(政府は)助けていないと思っている。処理水でも同じようなことが起きるのではないかと不安だ」と語気を強めた。
 市漁協の江川章組合長は「また問題が発生して『想定外』で片付けられたら漁業が消滅する」と、漁業者としては放出を容認できないとの立場を強調した。
 ただ、意見交換の中では、処理水の放出を若手漁業者が直接、監視できるような仕組みを提案する場面もあった。
 「30年、40年先に漁を行う若い世代が監視することで、風評被害防止や漁業の維持につながるのではないか」。江川氏は漁業の未来を見据え、政府の担当者に問いかけた。
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