[2023_07_10_07]質問…「放出される放射性物質の総量はどのくらいか」 東電…「タンクの6割5分が二次処理が必要で現段階では答えられない」 会津地方の住民も汚染水の海洋投棄に反対である 7/6会津地方住民説明・意見交換会 片岡輝美(「放射能から子どものいのちを守る会・会津」)(たんぽぽ2023年7月10日)
 
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質問…「放出される放射性物質の総量はどのくらいか」 東電…「タンクの6割5分が二次処理が必要で現段階では答えられない」 会津地方の住民も汚染水の海洋投棄に反対である 7/6会津地方住民説明・意見交換会 片岡輝美(「放射能から子どものいのちを守る会・会津」)

 
◎ 7月6日夕刻、会津若松市・會津稽古堂多目的ホールにて「ALPS処理水」を巡る政府・東京電力会津地方住民説明・意見交換会が開かれ、120人が参加しました。
 IAEA報告書が岸田首相に手渡された直後でもあり、メディアも多く入りました。長文ではありますが、当日の報告です。
 冒頭の30分、経産省資源エネルギー庁参事官・木野正登氏、東電リスクコミュニケーター・木元崇宏氏から説明がありました。
 両氏は「ALPS処理水」は安全基準を満たしているとして、放出は可能。廃炉に向けて溶けた燃料を取り出し、安全に保管するための敷地が必要として、タンクの撤去は不可欠と話しました。
 その後、市民5名が「ALPS処理水は本当に処理されているか」「放出の安全性について」「タンク保管の継続と増設について」「科学者や市民団体から提案された代替案の検討について」「関係者とは誰か」のテーマ別で質問を行いました。
 どなたも勉強を重ね自分の言葉で質問し、エネ庁や東電の回答にも冷静に再質問する姿がとても印象的でした。

◎ しかし質疑応答が進むにつれて、質問者や会場からも怒りの声が上がり始めました。「放出される放射性物質の総量はどのくらいか」との質問に、東電は「タンクの6割5分が二次処理が必要で、現段階では答えられない。浄化してデータを積み上げる」と回答。
 会場からは「総量も分からないのに流すのか!無責任だろう!」との声があがりました。

◎ また「関係者の理解無しには如何なる処分も行わないとした約束した関係者とは誰か」との問いには「さまざまな関係者がいて線引きは難しい。多くの方に説明を尽くす」と回答。
 これには「自分たちで『関係者』と言っておきながら、その対象も示せないのはただ単に言ってみただけなのではないか!丁寧な説明には時間がかかるのに、夏に流すというのは論理が破綻している!」との追及が続きました。

◎ またタンクの増設に関しては、事故前の法律の立て付けから放射性廃棄物を敷地外に持ち出すことはできず、環境省管轄の中間貯蔵施設の敷地などは使えないと応答。
 しかし、「原子力緊急事態宣言」発令のまま、福島県民に年間20ミリシーベルトの被ばくを強要し、1キログラム当たり8千ベクレル以下の汚染土は敷地から持ち出し、公共事業に再利用できるなどとする、自分たちに都合の良い特措法をダブルスタンダードで作っておきながら、新たな敷地に関しては事故前の法律を楯に確保は困難と説明し、しかも「大熊町や双葉町住民の心情を思えば、説得は難しい」と、突然県民感情を持ちだして、同じ県民である私たちの口を封じるような発言には大きな憤りを感じました。

◎ 会場からの質問時間は一人2分の制限がありましたが、約10数名の参加者からはトリチウムの危険性は既に日本の科学者によって報告されている、そもそも、世界最悪の原発過酷事故を起こした東電が今でも存続している矛盾から企業責任を追及、国策が失敗した今、即刻原発は止めるべきとの意見が続きました。
 会場全体から発言に賛同する拍手が響き、エネ庁や東電のはぐらかす回答には抗議の声が上がりました。
 会津地方の住民も汚染水の海洋投棄に反対であることを意思表示できた、とても意味ある集会だったと思います。
 一方、翌日からさらに海洋投棄に向けた情勢となっています。

◎ しかし、IAEA包括報告書は放出計画は「国際的な基準に合致」し、放射線が人体や海洋環境に与える影響は「無視できるほどごく僅か」としつつも、最終的に放出を決めるのは日本政府だと言っています。
 また原子力規制委員会も「放出設備の検査を終えた。設備に問題ない」としているだけです。
 IAEAも原子力規制委員会も評価しただけにすぎず、海洋放出を許可しているのではありません。
 では放出後の責任の所在はどこが担うのか…?と考えても、この12年間の政府と東電の無責任さを考えれば、放出後もそのまま無責任、問題はうやむや、被害者の泣き寝入りであることは容易に想像できます。

◎ 今回東電は「処理されたのは35%、残りはこれから処理される」と言いましたが、この約3割だけの処理と約7割の未処理の割合は、この数年変わっていません。
 「これ以上海を汚すな!市民会議」のメンバーとは「なぜ処理が進まないのか、進められない事情があるのではないか、ほんとうに処理が進んでいるのか、ALPSはほんとうに動いているのか…」などと話しています。

◎ 汚染水を処理することによって莫大な量の汚泥(スラリー)が生じます。エネ庁や東電は市民に説明をほとんどしていないと思いますが、その保管方法や場所など、極めて大きな問題と危険性を孕んでいます。
 ALPSを動かすからこの高濃度放射性汚泥が増えるわけですから、そのままのタンク保管を継続すべきだと考えます。

スラリー報道
https://www.asahi.com/articles/ASR4B46DKR46ULBH00F.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/a8deb9325f395c34bd5af4f9a703e69291e9293a

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