[2023_06_24_10]【第1原発の汚泥】総合的な対策必要(福島民報2023年6月24日)
 
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【第1原発の汚泥】総合的な対策必要

 東京電力福島第1原発の汚染水を浄化する過程で出た放射性物質を含む汚泥(スラリー)の保管場所が満杯に近づいている。汚染水の処理が滞り、廃炉作業に影響が及ぶような事態は避けなければならない。東電は汚泥の減量化など実効性のある対策を講じる必要がある。
 汚泥は、1〜3号機の溶融核燃料(デブリ)への注水などで生じた汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化した際に発生する。ストロンチウムなどの放射性物質を含むため、ポリエチレン製の高性能容器(HIC)に入れた上で、コンクリートの箱の中に保管される。
 容器は約3立方メートルあり、2日に1基のペースで増えている。保管容量4384基に対して15日現在、95・6%の4195基が埋まり、来年7月ごろには置き場がなくなる見通しという。東電は192基分の増設を計画しているが、1年ほどで再び満杯になる。用地の確保にも限りがあり、保管している汚泥の減量や処分など抜本的な対策が求められる。
 東電は脱水により汚泥の体積を小さくする処理施設の建設計画を2021(令和3)年に打ち出したが、設計段階で足踏みしている。原子力規制委員会から放射性物質を取り扱う手順や安全対策が不十分と指摘され、機器の仕様などを見直しているのが理由という。計画は進まず、委員から「(東電は)汚泥の保管を安定させる重要性を認識していないのではないか」との声も出始めている。
 処理施設が稼働すると、乾いた汚泥は固体廃棄物貯蔵庫に搬送される。使用済みの容器は処分されるため、満杯状態の保管場所に空きができる。一方で、処理後の汚泥が次々と持ち込まれる貯蔵庫は容量不足に拍車がかかる恐れがある。国と東電は、行き場のない放射性廃棄物の最終処分についても議論を前進させなくては、汚泥の問題は解決しないと捉えるべきだろう。
 東電は今月、ALPSの汚泥発生量を減らす工事に着手した。保管している容器の有効利用にも努めるとしている。いずれも一定の効果は期待できようが、汚泥が今後も増え続けることを考えれば、発生源となる汚染水自体の減少を含め、総合的な対策が欠かせない。(角田守良)
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