[2023_07_08_05]堤防門4割 安全規定なし 消防団員が豪雨時閉鎖 「危険なら避難」徹底を(東奥日報2023年7月8日)
 
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堤防門4割 安全規定なし 消防団員が豪雨時閉鎖 「危険なら避難」徹底を

 河川堤防に設けられた開閉式ゲートの4割は、豪雨時に門扉を閉鎖する消防団員らの安全配慮規定がないことが7日、総務省行政評価局の調査で分かった。東日本大震災では、海岸の水門閉鎖に向かった多数の団員が津波の犠牲になった。評価局は同様の事態を避けるため、危険があれば閉鎖より避難を優先するルールの徹底を国土交通省に勧告した。
 堤防のゲートは「陸閘」(りっこう)と呼ばれ、平時は人や車が通行し、河川氾濫の恐れがあると閉鎖する。県内にはないが、全国の1級河川と2級河川には計約2500基あり、国や都道府県が管理。このうち浸水危険性が高い地域にある110基を抽出し、昨年1月から今年7月に調査した。
 門扉の操作は、国や都道府県が市町村を通じ、地元の消防団や自治会などに委託するケースが多い。評価局が委託先との協定書などに「閉鎖が間に合わない場合は、避難を最優先する」といった規定があるかどうか調べた結果、42%に当たる46基は存在しなかった。
 理由は「危険が及ぶ切迫した状況となる可能性は低い」「閉鎖に時間がかかる大規模な施設ではない」などだった。しかし想定外の豪雨災害は各地で続発しており、操作員の被災を防ぐには安全配慮規定の整備が必要と判断した。
 書面で管理委託契約を交わしている92基の調査では、閉鎖できず住宅地などに浸水した場合、河川管理者である国や都道府県が賠償責任を負うと明記していたのは15%の14基にとどまった。責任が不明確だと浸水したら自身の責任になると操作員が考え、無理に閉鎖に向かう可能性があり、見直しを求めた。
 調査対象となった行政機関の4割は「操作員の高齢化が課題」と回答。豪雨時に門扉を閉鎖できない恐れがあり、利用が少ないゲートは廃止などの検討が必要とした。

 河川の堤防ゲート

 普段は門扉を開放して住民らの通り道として活用している。豪雨時などに閉鎖すると堤防の一部となり、浸水を防ぐ。大きさや構造は多様で「スライド式の門扉が自動開閉」「操作員が止水板をはめ込んで閉鎖」などのタイプがある。海岸の水門については国土交通省が2015年、操作員の出動や避難の手順などを定めた指針を策定した。
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