[2023_07_08_04]災害に強い島 再エネで 北海道南西沖地震30年 奥尻島、孤立化の弱点克服へ(東奥日報2023年7月8日)
 
参照元
災害に強い島 再エネで 北海道南西沖地震30年 奥尻島、孤立化の弱点克服へ

 1993年7月の北海道南西沖地震で大きな被害が出た奥尻島(奥尻町)が再生可能エネルギーを活用し、災害に強い島づくりに取り組んでいる。30年前の地震では停電が数日間続き、発電用燃料確保に不安が生じた。その経験を教訓に、島にあふれる自然のエネルギーを使って自前の電源を持ち、災害時に孤立しやすい弱点克服を目指す。

 奥尻島北西部の山中にある地熱発電所。6月13日に訪れると、地下約1600メートルからくみ上げた熱水と蒸気を分ける装置が「ゴーッ」と音を立てて動いていた。島でガソりンスタンドも経営する運営会社の越森修平社長(64)は「島は人口減少が続く。化石燃料だけで商売するのは限界がある」と話した。
 この発電所は15年以上前に新エネルギー・産業技術総合開発機構が調査のため掘った井戸を再利用し2017年から稼働。現在の出力は250キロワット。隣接する未利用の井戸を活用し、合計千キロワットまで増強する計画だ。
 島は今も電力の大部分をディーゼル発電に頼る。燃料の重油は北海道本島から船で運ぶが、悪天候で欠航することも。南西沖地震では津波で岸壁が損傷して重油を運ぶタンカーが一時接岸できなくなったほか、送電網が被害を受け停電が数日続いた。越森さんはその経験を振り返り「災害時もエネルギーを自給自足できれば心強い」と語る。
 町は2カ所の太陽光発電所(合計3千キロワット)と3基の風力発電(合計900キロワット)も新設する考え。将来的には一般家庭など民生部門の電力を再エネで賄い、30年度までに温室効果ガス排出量を約46%抑制する構想だ。町内の小学校で使う地元産の木質チップボイラーを公共施設の暖房にも取り入れ、エネルギーの「地産地消」も進める。
 防災対策にも余念がない。島の2カ所に蓄電池を配備し、災害時でも防災拠点への送電が途絶えないようにする計画。新村卓実町長は「現状では災害時に燃料がなくなれば避難生活すらままならない」と懸念する一方、「島には自然のエネルギーが豊富にある。それを使って自前の電源を持てれば、災害に強い島になる」と期待を込める。
 奥尻町の人口は、南西沖地震直前の1993年6月には4711人だったが、過疎化が進み、今年5月末時点で2315人に減少した。町は再エネの活用に取り組み、先行例として全国から観光客や視察を呼びこみたい考えだ。昨年には環境省が指定する「脱炭素先行地域」に、離島地域としては新潟県・佐渡島、鹿児島県・沖永良部島に続いて3番目に選ばれた。
 越森さんは「再エネの活用が進めば島の魅力になる」。新村町長は「島の交流人口が増える契機になれば」と訴えた。
KEY_WORD:HOKKAIDOUNANSEI_:再生エネルギー_:風力-発電_: