[2023_06_29_01]原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電気事業法改悪について 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その5)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)(たんぽぽ2023年6月29日)
 
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原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電気事業法改悪について 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その5)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)

 その2 電気事業法改悪について

1.運転期間の計算根拠について

 第27条の29の2「発電用原子炉の運転期間」として炉規法に定める運転期間40年の条項を廃止し、この法律に移した。そこでは『発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉について最初に合格した日から起算して40年とする。』として、表面上炉規法との関係は変更なしとしているが、その後の条文でこれを延長させる規定を設けた。
 以前の炉規法上の40年の規定と、この規定の間にどのような変更があるのかが明らかになっていない。

 実際は炉規法は原子炉の安全性を確保するための規制法であるのに対し、電事法は原子炉を利用するために使う期間を定める利用法の性格を持つ。
 即ち、今の姿は以前は最大60年の運転規制を課していたものを、なんだかんだと理由がつけば、無期限に利用できるように緩和されていることを意味する。
 さらに、これを認可する手続きは全く不明で、言うならば、「申請書を書けば許可される」に等しい実態があるのではないか。

 また、これら起算日については「最初に第49条第1項の検査に合格」したときとしているが、これは使用前検査のことで、炉規法第43条の3の11の規定に基づくものであり現行と同じ。
 炉規法と電事法では先に述べたとおり立法趣旨が異なるのに、起算日を含め同一としているのは何故かとの疑問がわく。
 以下に問題点を指摘してゆく。

2.40年の制限期間を超える許可の根拠について

 第2項で『原子力発電事業者は、その発電事業の用に供するため、前項の40年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、あらかじめ、経済産業大臣の認可を受けて、運転期間を延長することができる。』としているが、前項との関係で40年を超えることができる根拠が明確ではない。法律で規定しているのはあくまで算出方法に過ぎず、運転期間制限を取り払う根拠と、炉規法において許可され運転される原発の、電事法上の位置づけが、どのような関係に変わるの化の説明がない。

3.運転期間延長手続きについて

 第3項では『前項の認可を受けようとする原子力発電事業者は、次に掲げる事項を記載した申請書に経済産業省令で定める書類を添付して、経済産業大臣に提出しなければならない。』の第3号で『延長しようとする運転期間』について『20年を超える場合にあつては、申請に係る発電用原子炉の運転を停止した期間(同項第5号イからホまでに掲げる期間に該当するものに限る。』として項目を分けているが、その趣旨は何か。これは、炉規法で40年の後に20年を加えるとの変更を行ったことへの対応とみられる。
 しかし述べているとおり立法趣旨が異なるので炉規法をなぞることに意味がない。それにもかかわらず、炉規法から変わっていないことを殊更に強調したいが為に設けた条文とみられる。

4.運転延長許可条件について

 第4項の経産大臣の許可条件として「申請発電用原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。」とは、何をもって認定するのか。
 また「延長しようとする運転期間において申請発電用原子炉を運転することが、我が国において、脱炭素社会の実現に向けた発電事業における非化石エネルギー源の利用の促進を図りつつ、電気の安定供給を確保することに資すると認められること。」とは、何をもって認定するのか。

 さらに「その原子力発電事業者が、申請発電用原子炉に係る発電事業に関する法令の規定を遵守して当該発電事業に係る業務を実施するための態勢を整備していることその他当該発電事業を遂行する態勢の見直し及び改善に継続的に取り組むことが見込まれること。」とは、炉規法上の規制委での認可以外に、経産省で何をもって認定するのか。それぞれ全く理解できない。

 これらを申請書に書く必要があるのは事業者だが、そもそも日本の原子力は平和利用と称した商業利用でしか許可されていないばかりか、IAEAの査察等もそのために行われている。
 また、改訂法が「脱炭素電源法」と言うとおり、原発を利活用する理由が脱炭素エネルギーの利用促進となっており、いわば表題みたいなものである。
 それをいまさら聞くのだろうか。意味がわからない。
 さらに、それに対して許可を出す基準があるとしたら、それはいったい何か。
 とても興味が湧く。もちろん悪い意味で。これもひどい条文である。

5.運転期間の延長にかかる起算日について

 第5項「延長しようとする運転期間が20年を超える場合にあつては、その20年を超える期間が次に掲げる期間(平成23年3月11日以降の期間に限る。)を合算した期間以下であること。」との条文について、起算日を震災発生日とした根拠は何か。
 震災により止まった原発は東日本で15基あるが、西日本の原発は関係が無い。運転を続けていた原発もあるし、たまたま定期検査で止まっていたものもある。ところがそれらを含めて全ての原発の「基準日」を震災日とした根拠は説明されていない。これは不当であり不合理である。
                     (その6)に続く
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