[2023_05_04_03]特別版 富士山周辺で不気味な減少 河口湖の水位下降 富士宮市で水噴き出し 林道ひび割れ(島村英紀2023年5月4日)
 
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特別版 富士山周辺で不気味な減少 河口湖の水位下降 富士宮市で水噴き出し 林道ひび割れ

 このところ、富士山が騒がしい。
 この3月に神奈川、山梨、静岡の3県は関係機関を交えて防災対策協議会を開いて富士山の避難基本計画を発表したこともあり、2021年にはハザードマップが拡大されたこともある。
 富士山は18世紀、1707年の宝永噴火をして以来、300年以上も噴火していない。
 日本の上空にはいつも偏西風が吹いており、噴き出した火山灰は東に飛ぶ。このときも2時間で江戸に火山灰が降った。
 宝永噴火は爆発的な大噴火としていきなり始まった。この次の降灰も山麓で50センチ以上、首都圏は2センチ以上積もる可能性がある。東京の都心にも到達して、短時間のうちに都市機能がマヒする恐れがある。
 富士山から新宿までは100キロもない。宝永噴火の降灰が2センチ以上積もる地域の人口は、いまや首都圏で885万人にも達する。
 降灰が少なくても健康被害が出る。たとえば0.1ミリ積もっただけでも喘息の患者の半数が症状が悪化する。数ミリ火山灰が降ると、健康な人ものど、鼻、目に異常を訴える。
 火山灰は顕微鏡で見ると、尖ったガラスの粉だ。普通の灰とは違う。コンタクトレンズと眼の間に入ると角膜を傷める。
 コンタクトレンズには限らない。わずか0.1ミリとか1ミリで影響が出始めるわけだから、数センチ以上積もったら大変なことになる。
 交通、通信、上下水道、銀行・・すべてのものがコンピュータに頼っている現代にあっては火山灰の影響は計り知れない。
 火山灰がわずか1ミリ積もっただけで道路の白線が消え、道路標示が見えなくなり、空港の滑走路の線が消えて交通は大混乱する。また火山灰が積もった路面は乾いていても非常に滑りやすく、もし雨が降って湿るともっと始末が悪い。
 東京の被害は一国だけの被害に留まらず、国際的にも影響が大きい。宝永噴火なみの降灰に見舞われた近代都市はない。
 文明が進歩することは自然災害には弱くなることだ。過去たびたび首都圏を襲ってきた大地震でも、地震のたびに被害が大きくなり、いままではなかった新しい災害が増えてきている。
 富士山は「噴火のデパート」と言われる。過去にいろいろなタイプの噴火をしてきた。宝永噴火は富士山の3大噴火の一つで火山灰を多く出した。過去には溶岩流や火砕流を出したこともある。この次にどんな噴火が起きるかは分からない。噴火口が山頂なのか、東西南北どこかの山腹なのかによって噴火の影響は大幅に違ってしまう。
 じつは、この数年来、富士山には不思議なことがたくさん起きている。河口湖の水位が異常に下がったり、富士宮市の住宅地で水が噴き出した。林道に大きな割れ目が出来たこともある。噴火前の記録はなく、前兆かどうかは分からない。もちろん近代観測も、山体膨張や地震計などいろいろやっている。だが、問題は、これらの異常がどこまで行ったら次の噴火が起きるのか、という経験が全くないことなのだ。
 いつ、どんな形で噴火するのかわからないのが最大の問題なのである。
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