[2023_05_25_07]福島第一原発の土台損傷、原子力規制委が対策要求 東電見通しを「楽観的」と批判する理由は?(東京新聞2023年5月25日)
 
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福島第一原発の土台損傷、原子力規制委が対策要求 東電見通しを「楽観的」と批判する理由は?

 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)1号機の原子炉圧力容器を支える土台の損傷について、原子力規制委員会は24日の定例会合で、敷地外に放射性物質が飛散するケースも想定し、対策を検討するよう東電に指示する方針を決めた。対策は一筋縄ではいかない。高い放射線だけではなく、東電による事故収束作業の遅れ自体が壁となっている。 (小野沢健太、渡辺聖子)

 ◆内部の鉄筋が露出

 「周辺環境や住民に影響があるかもしれないことについては、事故を起こした東電に素早くやってもらうことが責務だ」。山中伸介委員長は会合後の会見で、甘い想定で対策を急ごうとしない東電を批判した。
 核燃料があった圧力容器を支える厚さ1.2メートルの円筒形の土台は、内側の壁面が全周で損傷し、コンクリートがなくなって内部の鉄筋が露出。だが、東電は放射性物質が建屋外に飛散する事態にはならないと想定し、数カ月かけて土台の耐震評価をするとしている。
 一方、規制委は圧力容器が落下して外側の格納容器も壊れ、放射性物質が外部に飛散する重大事態を想定した対応を優先させる必要があると判断した。
 会合では、東電への厳しい声が相次いだ。杉山智之委員は「東電の見解は楽観的。それなら大丈夫とは考えられない」と指摘した。

 ◆戻る住民、増す被ばくリスク

 1号機は2011年3月の事故時、水素爆発で建屋上部が吹き飛び、最上階がむき出しだ。最上階には崩れたがれきが散乱し、使用済み核燃料プールや格納容器の上に置かれたふたもずれ落ちた状態で露出している。格納容器が損傷すれば、放射性物質が建屋外へ放出しかねない。避難指示の解除が進んで周辺に住民が戻る中で、被ばくリスクが増しているのが実態だ。
 東電は「23年度ごろ」をめどに、1号機建屋を丸ごと覆う大型カバーの設置を計画している。プール内に残る392体の核燃料の取り出しに向け、がれき撤去などの作業時に放射性物質を外部へ飛散させないようにするためだ。
 カバーが完成すれば、格納容器が損傷しても、建屋外への放射性物質の飛散を抑える効果は期待できる。

 ◆汚染配管の撤去、相次ぐミス

 ところが、カバー設置の前提となる工事が進まず、23年度ごろとする設置目標も達成に暗雲が漂う。
 設置場所は1、2号機と排気筒を結ぶ配管約110メートル分と重なり、配管の撤去が避けられない。事故時の排気(ベント)に使われた配管は人が近づけないほど高濃度に汚染し、昨年3月から遠隔操作で撤去を始めた。
 これがうまくいかない。切断装置の不具合や手順ミスが続き、これまでに成功したのは約20メートル分だけ。6月中に撤去を終える計画だが、延期を繰り返しており、先行きは見通せない。
 圧力容器の土台損傷が発覚し、緊急時の影響緩和につながるカバー設置は重要性を増した。汚染配管撤去は緊急を要するはずだが、東電の危機意識は低い。8日の会見で、作業を失敗した下請け企業への対応を問われ、広報担当者はひとごとのように答えた。「われわれがどこまで関与しなければならないのか」
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