[2023_05_08_05]最大震度6強・能登地方の地震今後は…「ある意味、本体の活動の前兆というか準備段階」マグニチュード7の可能性も(前編)(TBS2023年5月8日)
 
参照元
最大震度6強・能登地方の地震今後は…「ある意味、本体の活動の前兆というか準備段階」マグニチュード7の可能性も(前編)

 2023年5月8日(月) 13:20
 最大震度6強を観測した5日の石川県能登地方の地震は、地震の規模、つまりエネルギーを示すマグニチュードが6.5でした。政府の地震調査委員会は能登地方の地震活動が「当分続くと考えられる」との見解ですが、富山や石川で地震の研究をする専門家は「本体の活動の前兆というか準備段階」としたうえで、今後マグニチュード7の可能性もありうると話します。マグニチュードが0.2上がると地震のエネルギーは2倍になり、0.5上がると5.6倍にもなるのです。心配される地震の今後について詳しく聞きました。
 取材したのは富山や石川の地震の研究をする富山大学の竹内章名誉教授。富山大学理学部でテクトニクス(地殻の構造と運動)を専門に研究し、火山や活断層、山地の隆起 など現在進行中の地殻変動を物理地学の方法で調べるなど、将来予測に役立つ研究をされてきました。
 竹内章名誉教授:「能登半島の北の海岸沿いで海のものも含めて地震帯というものがありますので、そこで起きているものだと思います。もう一つはそういう広い範囲のなかでの地震帯というほかに、珠洲で2020年の終わりぐらいからいろんな変動や異変が起きているんですけども、地面が盛り上がるとかそういうものと一緒に群発地震が続いてるんです。群発地震は3.11が終わって少し経ってからということで2016年ぐらいから始まってるんですけど急に増えだしたのは2020年の終わりぐらいから。これは2007年の能登半島地震の余震とは違っていて、珠洲の方で独立しておきているものなんです。その群発活動の一つだと思います」

 記者:「2020年から能登で群発地震が相次いでいるのはどうしてですか?」
 竹内章名誉教授:「群発地震が起きる仕組みから考えると地殻変動というような地盤の動きというか、そういうものが伴っていますので。そのあたりに群発地震の原因があると考えられる。近くの動きに関して言うと普通は地下からの水というものが考えられます。これは珠洲に限ったことではない。たとえば能登半島地震は2007年に起きているんですけどそのきっかけとなったのは水といわれています。それからもっと言えば富山の1858年の“飛越地震” (マグニチュード7.0 - 7.1と推定される地震)と呼ばれ、富山では有名な地震。これもきっかけは地下から深いところから上がってきた水がきっかけになって大きな地震になったというようなことで。その水に関係した地盤の動きが珠洲の場合は最近、観測機器が発達してきたこともあってデータが整ってきたので、非常にはっきりと見えたということだと思います」

 記者:「地殻変動が起きるメカニズムは?」
 竹内章名誉教授:「それはほとんど火山と一緒です。火山の場合は地下の高温のマントルの深い下から水が上がってくるんですね。そうすると岩石の融解の温度を下げてしまうんです。溶けやすくしてしまう。それでわずかな水でも融解の温度が下がってマグマが解ける。そういうマグマが出来るような状態のところでは火山ができますけど、能登とか日本列島の場所によっては火山ができない場所があって。しかし水はあがってくるということでその水というのは今度岩石を溶かすというよりは破壊しやすくする。岩石の強さ、強度というのを下げるというこうかがあるわけです。それで地下で岩石を壊すことになる」
 「さらに言えば水がどこからくるかというと、実は太平洋の方から日本列島の下に沈み込んでいる海のプレートですね。日本列島では東日本には太平洋プレートが沈み込んでいますし、西日本ではフィリピン海プレートが沈み込んでいる。中部地方は両方のプレートが沈み込んでいる。沈み込んでいくとプレートを作っている岩石、鉱物の中に含まれている水分というのが、深いところにいくと圧力で絞り出されたり、あるいは鉱物が変化して水をはきだすということで常に水がはきだされたりしているんです。場所によってはそれが火山を作ったりあるいは温泉を作ったりそれは日本各地どこにでもある状態」

 記者:「群発地震はこれからも続きますか?」
 竹内章名誉教授:「日本列島全体がそういう形でプレートの動き、運動の影響を受けているんですけどその運動の中で最も大きいのはぎゅうぎゅう押されるという状態。その押す力というのは、ぴたっと止まるというようなものではなくて永遠と続くようなもの。ですからその中で東日本大震災は1000年に1度の現象だった。同じように南海トラフの方でもあるわけですけど、そういう風にときどき海の方では、巨大地震が起きるわけですし、同時に“日本海側でも”それに連動するような形で動くというこれは永遠と続いているわけです」

 ある意味そういう本体の活動の前兆というか準備段階

 記者:「能登に関して言うと?」
 竹内章名誉教授:「能登に関しては続きます。珠洲の方で水が原因と言われているような隆起自体が止まってないんです。隆起が始まったのは2000年の終わりぐらいから顕著になってきたわけですけど、一時、止まったかに見えるようになったのはマグニチュード5クラスの大きめの地震が起きだしてきた。その状態で隆起したままの状態で続いてきているわけです。今回の地震もその中で起きていますので、すとんとそれが戻るという状態ではとてもない」

 記者:「そうすると今後さらに大きい地震が起きる可能性もありますか?」
 竹内章名誉教授:「今回は珠洲の地域に古い断層があって、どれも活断層と認められていないものがほとんどなんです。たくさん断層がある状態は北側の海底の岩壁も同じこと。いずれにせよそういうものが群発地震を起こしてきているので、その意味でこれまでのマグニチュード4とか5とかがたくさん起きるような群発地震っていうものの一連のもので“最大のもの”だという風にみることができる。複数の活断層というか複数の古傷が割れていることが続いているわけですけど、だいたいその古傷が動き終わると今度そのおおもととなっている断層があってそれが今回と同じようなマグニチュード6クラスの地震あるいは7というような地震が起きていますから、それは活断層の本体が動くということですね。ですからある意味そういう本体の活動の前兆というか準備段階という風にもかんがえられるわけです」(後編に続く)
KEY_WORD:石川県珠洲市_震度6強_:HIGASHINIHON_:NOTOHANTO_:HIETSU_: