[2023_05_16_01][社説]信頼の回復伴う電力値上げに(日経新聞2023年5月16日)
 
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[社説]信頼の回復伴う電力値上げに

 政府の物価問題に関する関係閣僚会議が、電力会社7社が申請していた家庭向け電気料金の引き上げを了承した。6月1日からの実施となる見込みだ。
 液化天然ガス(LNG)など発電燃料の価格上昇により、電力大手の2023年3月期決算は10社中8社が赤字となるなど経営は苦境にある。厳格な審査に基づく、燃料コストの料金への適切な転嫁はやむをえまい。
 ただし、足元では電力販売をめぐるカルテルや、新電力の顧客情報の不正閲覧など、公平な競争の土台を揺るがす電力大手の不祥事が相次いでいる。
 様々な商品やサービスの値上げが相次ぐなかで、電気料金の上昇は私たちの暮らしに一段の負担を強いる。電力業界は信頼の回復へ重い課題を背負っていることを忘れてはならない。
 政府の認可が必要となる規制料金が対象となる。東京電力ホールディングスや東北電力、中国電力など7社が申請していた。
 政府の審査会合が燃料費や人件費など料金を構成する原価について妥当性を検証した結果、値上げ幅は申請時の水準から圧縮され、標準的な家庭で14〜42%になる。とはいえ、繰り返される不正行為に消費者の不信は増している。値上げにあたり丁寧な説明と、さらなる経営の効率化が大切だ。
 顧客情報の不正閲覧問題を受けて関西電力や九州電力などは再発防止に向けた業務改善計画を経済産業省に提出した。電気事業連合会は各社の小売部門と送配電部門のシステムを遮断し、顧客情報を閲覧できないようにすることを確認した。経産省はより透明性が高い事業体制の検討を求めている。
 コンプライアンス(法令順守)は公正競争の大原則だ。これを欠いて電力自由化は保てない。電力会社は行動で示すしかない。
 国も役割を点検すべきだ。一連の不正行為を見逃したのはなぜか。新電力と電力大手の競争環境に不公平はないか。自由化制度全体の検証も欠かせない。
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