[2023_05_13_06]石川・能登の地震起こす水、どこから? 分かれる意見(日経新聞2023年5月13日)
 
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石川・能登の地震起こす水、どこから? 分かれる意見

 2023年5月13日 9:38
 2020年末から群発地震が続く石川県の能登半島北部で、最大のマグニチュード(M)6.5が起きた。政府の地震調査委員会は地下深くの水(流体)が関わるとの見方を示すが、この水がどこから来たのかは学者の間でも意見が分かれている。能登半島周辺には多くの断層があり、群発地震が呼び水となりM7級が起きる危険性を指摘する声も出ている。
 石川県珠洲市で5日午後にあった最大震度6強を受け、地震調査委は6日に臨時会合を開いた。平田直委員長(東京大名誉教授)は終了後の記者会見で「大きな地震が起きた理由は分からない。これが地震学の現状だ」と打ち明けた。
 周辺では20年末から震度1以上が400回を超えた。地震で地表が最大7センチ超盛り上がっており、西村卓也京都大教授(測地学)は、地下深くの水が上がって圧力をかけたり断層を滑らせたりしたのが原因と考える。
 日本の場合、群発地震は火山のそばで起きることが多く、マグマそのものやそこから出た水が原因だろうと考えられてきた。だが、能登半島に火山はなく、地下深くになぜ水があるのかは定かではない。
 考えられるのが、日本列島の下へ沈み込む海のプレートから海水が上昇する現象だ。
 産業技術総合研究所の中村仁美上級主任研究員(火山岩岩石学)によると、岩石に水を取り込んだプレートが能登半島の地下に沈み込んでいるが、地下250〜300キロで水が分離して上昇する。超高温のマントルがある深さだ。通常は水とマグマが一緒に上がってくるのだが、地下構造の関係で温度が低くマグマはできない。流体の水だけが上昇するのだという。
 一方、梅田浩司弘前大教授(地質学)は震源の地下に未知のマグマがある可能性を指摘する。白山や弥陀ケ原など能登半島の近くにも火山はある。地下の調査が難しい海に「マグマが潜んでいても不思議でない」。
 岡村行信産総研名誉リサーチャー(海洋地質学)によると、太古の能登半島は約3千万年前、ユーラシア大陸の東端から切り離されて徐々に移ってきた。それに伴ってできた地殻の裂け目が断層。地震を繰り返す活断層もそれなりに多く知られている地域だ。
 国土地理院によると、能登半島の地殻変動は継続中だ。岡村さんは「隆起や群発地震の原因が水だとすれば、断層も滑りやすくなるかもしれない。M6.5程度を起こす断層は地表から見えないことが多く、今後も別の場所で起きる可能性がある。活断層でM7級の地震が起きる可能性も否定できない」と指摘している。〔共同〕
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