[2023_04_13_04]大手電力カルテル なれ合い復活 競争失速 経営層が関与、改革急務(東奥日報2023年4月13日)
 
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大手電力カルテル なれ合い復活 競争失速 経営層が関与、改革急務

 大手電力間のカルテルを巡り、関西電力が森本孝前社長ら旧経営陣を含む幹部の処分を決めた。中部、中国、九州の3電力も経済産業省に経緯をまとめた報告書を提出。自由化後の値下げ競争は地域独占時代のなれ合い意識からわずか1年ほどで失速した。関与したのは各社の経営層で病巣は根深い。各社では新電力顧客情報の不正閲覧も判明しており、改革は待ったなしだ。
 「競争相手というより同じ課題を抱えた仲間という認識があった」。関電の森望社長は12日の記者会見で大手電力同士の関係性をこう表現した。自由化後の2017年秋ごろ、関電は関西外への進出を3社に伝達。競争が激化し、採算維持のため営業縮小の方針を決めた18年も森本氏ら経営層が各社に伝えていた。
 公正取引委員会によると「仁義切り」と称していた慣習で、関電の宮本信之執行役常務は「親しい人脈で情報交換をしていた」と認めた。独禁法を都合よく解釈し、企業秘密であるはずの営業戦略を他社に漏らしていた。
 関電は19年に発覚した役員らの金品受領問題で経産省から業務改善命令を受け、組織改革を進めてきた。結局、一連の改革を社長として率いた森本氏はカルテルを仕掛けた張本人だった。関電は違反を自主申告し処分を免れたが、カルテルの可能性を指摘したのは社外の人物。自浄作用は機能しなかった。
 仲間意識から一転、関電に「売られた」中国電は危機管理の甘さが際立つ。滝本夏彦社長と清水希茂会長が引責辞任するが、滝本氏が社長に昇格したのは公取委が立ち入り検査に入った後の22年6月だった。
 記者会見で滝本氏は「営業戦略上どうしても取りたいお客さまがいて(関電に)思いを述べた」と自らの関与を認めたにもかかわらず、課徴金減免制度を活用せず707億円もの課徴金を命じられた。全面的に否定し、法廷で争う構えの中部電、調査に協力し30%減額された九電とは対照的だ。
 中国電などが情報交換を重ねた理由に挙げるのが「安定供給」だ。「安値競争すれば安定供給に必要なコストを回収できない事態に陥りかねない」(中国電の宮本伸一コンプライアンス推進部門長)。新電力は自前の発電設備を持たない社が多く、卸電力市場から電気を調達する。供給源となるのは大手電力で、発電所の維持費が負担となっている。九電幹部も「自由化のルールは不完全で議論が必要だ」と漏らした。
 経産省の幹部は「法律やルールが前提にあることが認識されていないことが問題だ」とあきれた。各社では送配電子会社が持つ新電力顧客情報の不正閲覧も判明しており、自由化に逆行する行為が相次ぐ。「業界の意識が変わるにはまだ時間がかかる」
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