[2023_03_29_02]「毒電」7社が電力料金(個人・零細業者向けの規制料金)値上げを申請 単純な認可は許されない (上) (「毒電」=地域独占の巨大原発電力会社(沖縄は原発なし)、「独電」とも表現している)田中一郎(ちょぼちょぼ市民連合)(たんぽぽ2023年3月29日)
 
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「毒電」7社が電力料金(個人・零細業者向けの規制料金)値上げを申請 単純な認可は許されない (上) (「毒電」=地域独占の巨大原発電力会社(沖縄は原発なし)、「独電」とも表現している)田中一郎(ちょぼちょぼ市民連合)

 
◎ ご承知の通り、現在、「毒電」7社は経済産業省に対して、零細個人・事業者向けの電力規制料金の値上げ申請を出しています。
 値上げ率にして、28%(四国電力)〜46%(北陸電力)と、概ね3〜4割の値上げ申請です。その理由は化石燃料価格など諸経費の上昇だとしています。

◎ しかし、「毒電」のうち、関電が主導して中部、中国、九州の各電力会社が、お互いにお互いのエリア内での競争を自粛制限して電力価格を維持させるカルテル行為を行っていたことが発覚、巨額の罰金を課されることとなった他、ほとんど全部の「毒電」が、公共施設とも言うべき送配電会社の顧客情報をのぞき見し営業活動に使っていたこと(電気事業法違反)も明らかになりました。
 さすがにカルテル4社のうち関電、中部、九州は電力料金値上げ申請を控えているものの、中国電力は32%の値上げ申請を出しています。
 評論家の佐高信氏は「毒電」各社の値上げ申請を「盗人猛々しい」と批判しています(日刊ゲンダイ)。
 そもそもこんな法令違反を繰り返す「毒電」に対して、規制料金である小口電力料金の値上げを許してもいいものでしょうか。

◎ 今回の電気料金値上げは、個人・零細業者向けの規制料金の値上げであり、大企業や官庁などの大口ユーザー向け料金は外されています。
 原発をはじめとした発電設備を安全・健全に保つために必要不可欠な経費だというのであれば、等しく全てのユーザーに向けて、「毒電」がコスト構造を明らかに公開したうえで、電力料金値上げをお願いすべきでしょう。
 しかし、地域独占の上に胡坐をかく「毒電」の情報公開は劣悪・不透明で、コスト構造の妥当性を判断できる情報はほとんど非公開です。
 それどころか、そもそも、大口ユーザー向けの自由料金と、個人・零細業者向けの規制料金とで、どれくらいの違いがあるのかも不明のままです。

◎ 化石燃料については、天然ガスは長期契約なので国際価格が高騰しても日本の電力会社の仕入れ価格は大して上がっていません(下記資源エネルギー庁グラフ参照)。
 石炭は多くが1年契約ですが、1カ月ほど前に日経が大きく値下がりしたことを伝えています(下記参照)。
 石油も同様に値下がりしています(発電用石油は重油でありもともと価格が安いことに加え、最近では石油火力は非常に少なくなっています)。
 また、一時は行き過ぎた円安が懸念されましたが、それも昨今では落ち着きを取り戻しているかに見えます。
 つまり、電力料金を値上げする根拠がなくなっているのです。
 化石燃料の価格高騰は電力料金値上げの理由にはなりません。

(関連)直近の卸電力市場の動向(資源エネルギー庁 2022年4月26日)
               (注目:P7天然ガス輸入価格)
 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/048_03_02.pdf
(関連)発電用 豪州石炭が急落、欧州のガス代替需要鈍る、
    日本 電力値上げ縮小も(日経 2023.3.2)
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB253MD0V20C23A2000000/
(関連)米原油先物70ドル割れ、OPECプラス動向焦点、
    金融発の需要減警戒(日経 2023.3.18)

◎ では何故、しかも、個人・零細業者向けの電力料金の値上げを申請しているのかというと、原発・核燃に追加安全投資で6兆円を超える巨額のカネを突っ込み、しかもその大半の原発・核燃が1Wの電力も発電していないのですから(もう何年にもなる)、原発電力会社の経営が苦しくなるのはあたりまえです。
 一種の放漫経営そのものです。
 しかも、大口ユーザー向けの電力価格は自由競争が激しいので値上げができないため、電力会社にとっての最後の「リゾート市場」である個人・零細業者向けの電力料金の値上げを、30〜40%も、あつかましくも大幅に申請して、政治家や経済産業省を使って政治的に決着させようとしているということです。

◎ また、電力各社がどこまで経営合理化をして「最後の手段」として値上げ申請をしているのかもあやふやです(例:「毒電」で原発電力のCMをやっている会社はないのか=東電は新潟で原発電力のCMを実施)。
 今日の経済情勢から値上げをしたくてもできなくて困っている企業が多い中で、「毒電」にだけ政治的に大幅な値上げを認めてもいいのでしょうか?
 私がこれまで愚策と申し上げてきた政府による電力料金への補助金支給(バラマキ)の効果も、この値上げを認めれば吹き飛びます。

◎ 万が一にも値上げを認めるというのなら、値上げ幅を大きく削るとともに、「毒電」に事実上、私物化されている送配電会社を所有分離させ、公的運営に切り替えていく必要があります。
 また更に、発電、原発、電力小売りの各部門を分社化させて法的分離する(数年後には独禁法を適用して地域独占がなくなるまで所有分離させる)ことも併せて条件とし、今後二度と今回のような法令違反の不祥事が発生しない制度的保障を確保した上で、電力自由化=電力システム改革を進めていく必要があります。
 特に下記で申し上げる「原発への偏った過度の政策的テコ入れ」は、日本の電力のコスト構造を硬直的で割高なものにしてしまい、電力自由化の目的を台無しにしてしまいます。

◎ 幸いにして、規制電力料金値上げの際に、経済産業省(認可権限省)が協議しなければいけない相手である消費者庁(河野太郎担当大臣)が「不祥事の影響を検証しなければ協議に応じない」としており、今後の展開が注目です(下記参照)。
(関連)電力値上げ協議 消費者庁拒否も、不祥事の影響「検証しなければ応じない」(朝日 2023.3.25)
 https://www.asahi.com/articles/ASR3S46JLR3SUTFK006.html
 (下)に続く
KEY_WORD:電力各社_電気料金_値上げ_: