[2023_03_29_01]ウクライナが「劣化ウラン戦争の戦場」にされる (上)(2回の連載) NATOもロシア軍も保有する劣化ウラン弾とは (ウラン濃縮で発生する濃縮残渣を軍事転用したもの) 有害な劣化ウラン弾が使用される理由は 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年3月29日)
 
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ウクライナが「劣化ウラン戦争の戦場」にされる (上)(2回の連載) NATOもロシア軍も保有する劣化ウラン弾とは (ウラン濃縮で発生する濃縮残渣を軍事転用したもの) 有害な劣化ウラン弾が使用される理由は 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎劣化ウラン弾の出身地と経歴
 ウラニウム(以下ウラン)は金属元素として地中に埋まっており、これを多く含む鉱石としては閃ウラン鉱や燐灰ウラン石などがあります。
 これらウランを採掘、精錬して「イエローケーキ」と呼ばれるウラン精鉱を生産します。このまま金属ウランにしても核燃料としたのでは性能が悪いので、現代では天然状態では0.7%程度のウラン235を4から5%程度にまで「濃縮」したウランを使います。
 この工程を「ウラン濃縮」といいますが、核燃料だけでなく核兵器級ウランであるウラン235が93%から98%までに高める工程も同じです。
 言い換えればウラン濃縮技術を持つ国は全部核兵器級ウランを製造する能力があるということで、これには核武装国以外にも日本、ドイツ、オランダ、ベルギーなどがあります。
 ウラン濃縮を行う工程で、ウラン235の濃度が低い「テールアッセイ」(ウラン濃縮における濃縮残渣(tail assay)のこと。ウラン235の濃度は天然ウランより低い0.25%程度)が作られます。
 これを「劣化ウラン」といいます。
 ウラン濃縮の製品の量よりも格段に多いため(*)、原子力産業にとってはやっかいな廃棄物です。一部は核兵器の部品にも使われますが、大半は使い道のないまま貯蔵されています。(ただし現代では使用済み燃料の貯蔵容器の遮蔽体としても使われています)
 これを軍事転用したのが劣化ウラン兵器です。
 比重が重く、密度も高いので、ウラン金属として精錬加工し、弾頭や装甲板、あるいは航空機などのバラストとして利用してきました。
 最初に劣化ウランの存在を知ったのは1985年8月12日の日航ジャンボ機墜落事故です。
 これは軍用機ではありませんが、当時は民間航空機の昇降舵などのカウンターウエイト(昇降舵などが風を受け重くなるので反対側に比重の大きいおもりを付けて少ない動力でも操作ができるように取り付けたおもり)にも劣化ウランの塊が取り付けられていたため、水平、垂直尾翼が空中分解し相模湾から墜落現場まで散乱した事件です。日航機事故では他にも積荷の医療用放射線源が墜落に巻き込まれています。
 劣化ウランが戦場で使用された最初は1991年の湾岸戦争とされています。それまでも演習などで使用されていたと思われますが、詳細なことはわかっていません。
 しかし湾岸戦争ではイラク軍の戦車などに対して320トン使われたと公式発表されています。
 その後、1999年のコソボ紛争で13トン、2003年のイラク戦争で数十トン、2015年のISへの武力攻撃にも対戦車機関砲の弾薬として使用されたとされまていす。
 これら以外にも、地中貫徹爆弾(バンカーバスター)の貫通体として使用された例があるとの報告があります。

*天然ウラン100トンから5%の濃縮ウランを得る際に、0.25%の劣化ウランが出る場合、製品ウランは約8.5トンに対して、劣化ウランは91.5トンになる。
 (下)に続く

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